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【後編】STOP! 親子ゲンカ ゲーム&ネットと子どもの「いい関係」

 ゲームやスマホに熱中する子どもたちと保護者の「遊びたい」vs「勉強させたい」の果てなきバトル。使用ルールを決めても守れず…を繰り返していませんか? 便利なツールとして、子どもたち自身が主体性を持って使いこなすにはどうすればいいのか考えてみましょう。

 

【前編】​教えて!青山せんせい 子どもとゲーム&ネット、どう付き合うのが正解? はこちら

教えて!石井せんせい ゲーム障害のこと、気になります…

 世界保健機関(WHO)が国際疾病分類として認定し話題になった「ゲーム障害」。

 どのような症例なのか、ハマりやすいタイプのことや診断基準、具体的な対策方法などを、松江市でこども診療科・こころの診療科を開く「いしいクリニック」の石井尚吾先生に聞きました。

ゲーム障害に見られる兆候と、診断基準について教えてください。

 

 長時間をゲームに費やすために、家庭での役割がおろそかになり学業に支障がでるなど、社会適応に影響がでている状況を「ゲーム障害」と呼びます。2019年5月25日に世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を精神疾患として正式に認定しました。診断基準「国際疾病分類第11回改訂版」(ICD-11)は次の通りです。

 

 

ゲーム障害

1.ゲームをする時間や頻度、集中度、間隔、終了などを自分で制御できない

2.日常生活において他の何よりもゲームを最優先させる

3.日常生活に問題が生じてもなおゲームを続け、より多くしようとする

4.上記3つの条件に当てはまる状態が12カ月以上続き、社会生活に重大な支障が出ている

 

 具体的には、家族や友人と過ごすよりもゲームを選ぶようになり、進行すると食事や睡眠など生活に必要なことを減らしてでもゲームをしようとするため、まれに生命に問題が生ずることもあります。

 ゲームの邪魔をされるとイライラして怒ったり、ゲームをしていないと憂うつで、再開すると気分がよくなります。ゲームのなかで新しい仲間をつくることもしばしばあります。

 WHOは、ゲーム人口の2~3%が依存症の恐れがあると試算していますが、治療法や予防対策が確立されていません。

依存するまでハマってしまうきっかけや、ハマりやすい特徴的な人柄・タイプはありますか?

 

 いろいろなものに興味を持って取り組める人はハマってしまうことはありません。

多種多様なものに興味が持てない、または興味を持ってもうまくできず評価されない人は、ゲームの中では達成感を感じ、自己評価を高めることができる場合があります。

 こだわり傾向があり、社会的には自信がなくて「自分は役立っていない」と感じてしまうタイプの人が、ゲームの中だけで存在感を感じるとハマりやすいのかもしれません。

 

 

発達障がい(グレーゾーン含む)がある場合で、ゲームに激しく執着する場合はどう対応したらいいですか?

 

 ルールの確立が第一です。親も安定した態度でルールを守ることが必要です。その時の気分で許可したり禁止したりすることはトラブルの原因になってしまいます。重症で社会生活に大きな問題が生ずる場合は服薬の適応もあります。

改善に取り組むには「自分が依存状態にある」ことを認識させる必要がありますが、どう促したらいいのでしょうか。

 

 家族や親しい人の説明で理解がうまくできない場合は、第三者からの評価のほうが受け入れやすいようです。家族の中での評価ではお互いに甘えがあり、過小・過剰な評価をしたり、受け入れができないことがしばしばあります。お子さんが「権威」と感じている人から、評価され説明されると理解できる場合も増えます。学校の先生や医師なども候補になります。

 

「依存」という心理の面からみて「これはしないほうがいい」というNGな指導はありますか?

 

 「絶対にさせない」などの厳しい制約は、家庭では控えるべきです。依存状態ですから、ゲームをすることによって心理的な安定を保っています。厳しい制約をするためには、依存を制御するための心理的・環境的な支援が必要です。

医療の支援としては、具体的にはどのような内容がありますか?

 

診断、カウンセリング、薬物療法、入院治療が挙げられます

 診断は、第三者による評価の最後のもので、本人に最終的な自覚を促す手段です。また、抑うつ神経症などの一部症状として出現するゲームへの耽溺(たんでき)などの見分けもします。

 その他の医療支援としては、本人への自覚や生活リズムを確立・定着するためのカウンセリング、興奮や不安をやわらげ自己抑制を改善するための薬物療法などが大きなものです。

 改善が乏しく、睡眠や食事にも大きな影響が考えられるときは、最終的には入院治療も選ばざるを得ない場合もあります。

 

 

いしいクリニック

石井尚吾先生

 

 広島大学医学部卒業後、鳥取大学、自治医科大学、九州大学、テキサス大学で研修。1990年国立療養所松江病院小児科、1995年東部島根心身障害医療福祉センターで勤務ののち、1998年「いしいクリニック」を開設。小児科一般、発達障がい医学などを専攻し、患者・家族への適切かつあたたかなアドバイスに信頼が集まる。

 【いしいクリニック】島根県松江市大庭町1802-3 【MAP】

 HP:こちらから

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