グルメ

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太切り蕎麦に濃厚な生ゆばをまとわせて<出雲そば 鹿幸(ろっこう)>米子

蕎麦好きが高じ、50代目前で消防士から転身。

奥出雲の名店で修業し、米子で愛される蕎麦店を受け継いで昨冬開業。

島根県産を中心に選び抜いたソバを自家製粉、「歯ごたえを楽しんでほしい」とガッシリした太切りで出雲そばの奥深さを伝える。

奥出雲町・石田とうふ店の極上品を惜しげなくのせた生ゆばそば(1,500円、写真。天ぷら別)では、濃厚クリーミーなゆばが噛むほどに風味を増す麺を引き立て、箸が止まらない。

 

大豆の香りも濃厚なゆばの下には、やや太目に切りそろえられた蕎麦。

「細切りののど越しの良さもいいんですが、噛み応えを楽しみながら風味をしっかり感じられる太切りにしています」と、店主の高橋正武さん。

タンパク質の含有が多くしっかりつながることから、島根県産を中心に高地で栽培されたソバにこだわって仕入れ、自家製粉したものを店先で手打ちしているそう。

 

一口大に取ったゆばと絡めるようにしてつゆに付け、いざ口中へ…存在感に男気すら感じる蕎麦が、クリーミーなゆばに引き立てられ、思わず言葉をなくして味わう。

 

つゆのまろやかさも特筆もの。

こんぶや本枯節、イリコなどをふんだんに使い、奥出雲町・森田醤油の丸大豆木桶仕込みしょうゆで仕上げたもので、全くトガリ感がなく、思わず飲んでしまいたくなるほど。

 

珍しい生ゆばの天ぷら(600円)を添えてゆば尽くしも一興。

奥様が担当するという天ぷらは衣が薄く、サクッと噛めば中からとろけて、まさに至福!

添えられた塩はもちろんのこと、前述の蕎麦つゆにつけても絶品。

 

品書きはこちら。

割子や釜揚げといった、ごまかしの利かないシンプルなラインナップにはむしろ本気を感じる。

このほか「数えきれないほどの海苔を試した」という磯のり釜揚げ(1,050円)など、具が乗るものもあくまでも蕎麦を引き立てるものだけ、という潔さ。

 

水と粉だけで作る蕎麦は、日によってはもちろん、一日のうちの時間帯や天気によっても出来に微妙な差が出るといい、常連はその違いすら言い当てるとか。

蕎麦のおもしろさはこういうところなのだろう。

 

小ぢんまりとしたお店は、米子で昭和時代から愛された蕎麦店「盛屋」を、3代目として引き継いだもの。

 

高橋さんは、もともと島根県安来市で消防士として勤務しながら、趣味で20年ほど前から蕎麦を打っていた無類の蕎麦好き。

「この道に進もうと心に決め、奥出雲の店で3年ほど修業しながら、いつかは独立を…と夢見ていたところ、盛屋の常連客から声をかけていただいたんです」

後継がいなかった店は、こうして「鹿幸」として生まれ変わることに。

 

目指すのは、素材にこだわるゆえに日持ちはしないが、その日そのときの作り立てで迎える「おふくろの味」。

修行先、引き継いだ店…2つの名店で学んだ味に、高橋さん自身のオリジナリティと熱い思いも加えた、ここだけの逸品が供されている。

 

出雲そば 鹿幸

住所:米子市米原9‐3‐20 東亜青果卸売市場内 【MAP】
電話:090-7970-9403
営業:11:00~14:30(売り切れ次第終了)
休み:火曜日ほか不定休
駐車場:あり
IG: こちらから

 

(記事は2023年6月20日現在)

 

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