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創る【安来市】〈広瀬和紙職人・大東 由季さん〉

思わぬ色との出合いを楽しむ

自然豊かな安来市広瀬町布部。江戸時代から続く伝統工芸品で、丈夫な紙として知られる広瀬和紙の6代目を、2年前に承継した大東由季さん(29)。工房兼店舗「彩工房紙季漉(いろどりこうぼうしきろく)を訪ねた。

この日は、楮(こうぞ)を原料にアカネを使った草木染めによる紙漉(す)きが穏やかに、淡々と一定のリズムで進められていた。

ものづくりが好きだった大東さん。作品ではなく、素材となるものをつくりたいと京都伝統工芸大学校の和紙工芸専攻で学んだ後、浜田の事業所で石見神楽の面などに使う和紙づくりに携わった。「和紙づくりがもっとうまくなりたい」との思いが強まったころ、たまたま広瀬和紙5代目の長島勲さんが後継者を探していることを知る。数カ月間浜田から広瀬に通い、後継者として本気で修業したい思いが伝わり、本格的に修業が始まった。

長島さんは惜しみなく技を伝え、「ひと通りやってみなさい」と温かく見守ってくれた。修業期間中、三椏(みつまた)を原料にした紙漉きなど、「いろいろな紙づくりを経験させてもらった。たくさん失敗もしたが、だからこそ身についた」と振り返る。

 

大東さんが大切にしているのは質のいい、“いい紙”をつくること。「いい紙のために変えてはいけないところは変えないで守ってほしいが、新しい技術がいい紙のためになると思えば変えていいと長島さんは大東さんを信頼して後を託し、大東さんは師の思いに応える。

伝統の和紙づくりに加え、昨年から新たに手掛けているのが草木染め。工房周辺や国産の植物を原料に紙を染め、草木染めを探究する彩りアーティストの母・直美さんと一緒に仕上げるアイテムも増え、幅が広がってきた。同じ植物でも、採取場所や時期によって異なる色に染まったり、乾燥させたら違う色が現れたり。「思わぬ色との出合いが面白く、和紙づくりは今も相変わらず楽しい」と笑顔の大東さん。

今後、「オーダーに応えられるように技を修練していきたい」「壁紙や折り紙など厚い紙の可能性を広げ、若い人にも使ってもらえる和紙を考えていきたいと話し、大東さんならではの和紙世界が広がっていく。

 

プロフィール

おおひがし・ゆき 1994年生まれ。

京都伝統工芸大学校和紙工芸専攻で学んだ後、浜田の事業所で和紙づくりに携わる。2018年広瀬和紙5代目の長島勲さんに弟子入りし3年間修業。広瀬和紙6代目となり22年3月に築約130年の古民家で工房兼店舗「彩工房紙季漉」をオープン。23年からは、草木染めにも取り組む。和紙の制作・加工を手掛けるほか、和紙小物作り体験なども開催(要予約)。

問い合わせは

◎TEL:0854-26-4816
◎インスタグラム:@hirosewashi_shikiroku
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