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創る【松江市】〈組子細工アクセサリー作家 野尻 かおりさん〉

伝統を生かした元気になれるアクセサリー
ヒノキや杉、桜など、さまざまな木材のみで細かなパーツが整然と組まれ、その正確さと美しさに息をのむ伝統の技、組子細工。この組子細工を身近なファッションアイテムとして発信している野尻かおりさん。舟木木工所(雲南市)の代表で現代の名工として知られる舟木清さんの下で修業し、アクセサリー制作に携わっている。1円玉より小さなものもあり、「小さくなればなるほど難しいけれど、どこまで小さくできるのかなとやる気が湧いてくる」と笑う。
組子細工との出合いは、今から6年前。やりたいことをしようと、興味をもっていた日本の伝統工芸について調べていて組子細工を見つけた。「文様のデザインがすてきで、木でできていることに感動した」。もともと木が好きで、ものづくりも好きだったこともあり、島根県内で教えてもらえるところをすぐに探し、舟木木工所へ。
修業中、小さなパーツを作りながら「アクセサリーになりそう。身に着けることで伝統工芸を身近に感じてもらえるのでは」と思った野尻さん。「やってみるだわ。やってみんと分からんわね」という舟木さんの言葉に背中を押され、舟木さんを中心に、同期の研修生や雲南市の協力のもとアクセサリーブランド「kino:el(キノエル)」を立ち上げた。
島根県産の木材を中心に、差し色に南米の木を使用し、軽さと経年変化も魅力。麻の葉など、同じ文様でも木の色を変えるだけで全く異なる印象となるため、こうしようああしようと次々アイデアがあふれる。「デザインを考えている時が好き」と話し、身に着ける人を想像しながら、心を込めて制作。繊細で端正な造形と温もりが共存する作品で「身に着けられる方がと元気になったり、笑顔になったりしてもらいたい。
2024年、パリで開催されたジャパンエキスポに参加したところ、制作体験を楽しんでもらえて興味を持ってくれた人も多く、海外展開の可能性を感じ、「海外に向けても発信していきたい」と目を輝かせる。同じ天然素材で磨けば光る宝石と組み合わせるなど、チャレンジしたいことがいっぱい。「技術を惜しげもなく教え、フットワークが軽く、新しいことにも挑み続ける舟木さんを尊敬している」と野尻さん。師匠にならって、野尻さんの挑戦も続く。
プロフィール
のじり・かおり 1976年生まれ。
2019年に舟木木工所の舟木清さんの下で、県の職人育成事業を活用し2年修業したのち同木工所に就職。育成期間中の20年に、雲南市や木工所の同僚とともにアクセサリーブランド「kino:el」を立ち上げ、各種アクセサリーを制作。24年フランス・パリで開催された「ジャパンエキスポ」に参加。山陰中央新報社文化センターで特別講座講師も務める。作品の取り扱いは島根県立美術館などでも。
問い合わせ:Webサイトはこちら。「舟木木工所」で検索。

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