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WEBでも教えて!青山せんせい 【不登校】本当の支援は大人の意識改革から 編
りびえーる本紙で掲載するたびに大きな反響がある、子育て応援企画「教えて!青山せんせい」のWEB版。
就学前から10代後半までの子どもたちを持つ親&祖父母へ向けて、毎回さまざまなテーマをお届け。どの世代へ向けたお話も、どこかで必ずあなたのお子さん・お孫さんにつながるのが不思議です。
子どもも親も祖父母も幸せになる…子育てを楽しんじゃうヒントを、この連載で見つけてください!
【不登校】本当の支援は大人の意識改革から 編
学校に行きにくい子どもたちは年々増えています。
新時代を生きる彼らがひとりひとりの能力を発揮するために、大人に求められていることはなんなのでしょうか。
この秋、青山せんせいはこの状況を改善する一助として新しい事業をスタートしたそう。
今回は、なぜ今のタイミングでこの取り組みが必要なのかについて、お話を聞きました。
それでは今回も…教えて!青山せんせい!
「不登校」を増やす一因とは
不登校の支援や、お母さんの子育て支援のなかで、私は
「今は甘えさせたらいい」「今は何も言わない」「過指示・過干渉・過保護をしない」
とよくアドバイスします。
ほとんどこればかりを伝えているといってもいいかもしれません。
でもそうすると、
「そんなことを言ったって世の中甘くない」
「何もいわないと子どもはどんどんダメになっていく」
「指示しないと動けないし、私が何も言わなかったら何もできないんです」
という人もいます。
これはまだかわいいほうで、
「何もわかっていない。そんな風に甘くしてるから子どもたちがどんどんダメになるんだ」
「もっと厳しく、暴力をふるってでもやらせればいい」
という声もいただきます。
最近の風潮でこのような過激な発言は結構少なくはなっていますが、それでも匿名性が高い場所だとこうした発言は増えるようです。
文面や価値観から、中年以降の方かなと思うこともあります。
こんなコメントをいただくたびに、この方はこうした価値観の元で育てられて、その価値観を時代とともにアップデートできていないのではないかな…と思うのです。
2022年に学習指導要領が大幅に変わり、
「学力観」=育てたい資質や能力は変わったのに、周囲がいつまでも旧学習指導要領のままの価値観でいる
…この影響はとても大きいです。
将来を見据えたうえで望まれている「子どもの現場」と、
実際の「子どもを囲む環境の常識」の違い
そのギャップのなか子どもたちは育てられることになるからです。
このあたりが学校へ行きにくい子が増えてきた、一つの要因ではないでしょうか。
こうした価値観のギャップは、今なお無意識に存在し続けています。
人口比率で考えてみましょう。
学校に通っている世代=おおむね20歳未満と、20歳以上…いえ、30歳以上でもいいです。
これらの世代間で人口差があまりにも大きすぎると、世の中の価値観が変わらないのです。
たとえ20代以下の世界で価値観が変わっても、
人口比が多いそれ以上の世代の世界で学力観や望まれる人材像が以前のままだったらどうでしょうか。
新世代の有能さも、無能に認定されるんですよね。
これが、わたしが「子育て・教育の認知を変える」…すなわち、大人世代が持っている教育の認知を変えることに労力している大きな理由です。
価値観ギャップが社会の進化を止める
私たち50代以上の世界で当然だったことは、今は当然ではないのです。
鉛筆でノートに書く時代から、タブレットに書き込んだりタッチすればOKの時代。
ここまでは理解できると思います、やったこともあるでしょう。
AI(人工知能)へのイメージはどうでしょうか?
AIが台頭してきて、情報の収集や蓄積はそれらがやってくれます。 情報処理もやってくれます。
世界中の情報も、こちらがAIを上手に使えば、一瞬で集めてきてくれます。
もはや私たちは、調べたり覚えることに労力をかけなくてもいいんです。
では、次に必要になる力ってなんでしょうね?
ここまで読んで、この先がわかったり、「こうじゃないかな?」など自分なりに考えられる人は大丈夫だと思います。
でも、もしピンと来ていない人は…もしかしたらもうすでに、ひと昔前に取り残されているままかもしれません。
まして「そもそも指一本で楽して情報を集めるなんて」と眉をひそめるのは全くもってナンセンスです。
これからの時代は、「たくさんある情報の中から情報を選ぶ力」が必要。
さらにその前に、情報を選ぶために「問いを立てる力」が必要なんです。
それができなければ、目の前にある素晴らしいAIも、ただのガラクタにすぎません。
今話題にしているAIのこと、未来の話だと思ったら大きな間違いですし、AIのことだけではないんですよ。
地域もそう。 人もそう。
自分の周りにいる老若男女、すべての人に言えることなんですよね。
こちらの考え方や見方一つで、目の前の環境も人もすべて、
意味がない なにもない 価値がない ものになってしまうんです。
価値がないのか
価値を見いだせてないのか
価値に気が付けないのか
不安や否定が先にたち、価値を持たせたくないのか。
きっとこれは、それを受け取る側の問題。
でも、これから来る予測不可能な時代…「society5.0時代」に向けて、その時代を生きる子ども世代のために、生きる力を育てること・価値を残すことが、いま人生の半分終わった人間がやるべきことではないかと思うのです。
※society5.0時代…サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society)のこと。
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画においてわが国が目指すべき未来社会の姿として内閣府が提唱しているもの
子どもたちのために「大人が信じ、大人が変わる」
もちろん、私たちの価値観が間違っているとは言いません。
これから必要になる価値観とはズレてしまった部分を、再構築するということです。
こういうとたいていの人は、今まで生きてきた自分を否定されたような気持になるかもしれません。
そうですね…江戸から明治になるころ、武士がそうであったように。
今この過渡期にどう考えるかが、肝要なんです。
もう自分たちに価値はないのか!と荒くれるのではなく、
その生きてきた経験と体験を、今の時代にどう活用して、これからの時代どう生きていくべきなのか。
どう自分を社会に返していくのか…を考えてほしいと思います。
大したことをしなくてもいいのです。
未来に不安になるのではなく、
今の日本の人口のほとんどを占める私たち大人世代がしてきたことを信じた上で、
変わっていく社会の中「いい未来を作ろう」という未来志向のポジティブな考え方になる。
それだけで、目の前の若い世代に安心を与えることになります。
そうすると社会の空気感が変わり、その結果、
実際に社会が変わるのではないかなと思います。
子どもを育てるのは、大きな人材育成プロジェクト。
つまり未来の社会を育てるということ。
こんなに困難がいっぱいの子どもたち…ですが、本当に困難なんでしょうか?
大人が勝手に、自分の不安な現状を子どもに重ねているのではないでしょうか。
もちろん考えるべき課題はありますが、それは大人が責任をもって解決するべきなんじゃないか…なあんて思います
今回は子育てそのものの話ではなく、なぜ私がこのような活動をしているかの理由についてのお話でした。
小さなところから少しずつでも、子育て・教育の認知を変えたい…ただそれだけなんです。
子育て・教育の認知を変えるために必要なことは、子どもを信じること=自分を信じること。
あなたにも、あなた自身が成長してきた力を信じて、一緒に変えていってほしいと思います。
「しあわせなおかあさん塾」青山節美さん(松江市)
親学ファシリテーターとして4,000人以上のお母さんたちと接する中で、「親が変われば子どもの未来は変わる」を理念に2018年同塾を開講、講座動員数は現在延べ1万人以上。
登録者数2.55万人(7月末現在)を数えるYouTubeチャンネル「未来へつながるしあわせな子育て塾」でも迷える親たちへ具体的なヒントとエールを送り続けている。