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コラム◆◇◆神の住む島・屋久島に暮らして VOL.2

1年に366日雨が降る?

8月号よりはじまったコラム、第1弾をお読みくださった皆さま、ありがとうございました。 実際に屋久島を訪れてみたくなったとのお声もいただき、うれしい限りです。 

屋久島のことを聞かれるとき、大抵の方に「雨が多いところなのですよね?」と言われます。 「月に35日雨が降る」「1年に366日雨が降る」、そんなことばを聞いたことがある方も多いかもしれません。かつては年間雨量日本一ともいわれ、人里では2日に1度、山で3日のうち2日は雨に合うということですから、やはり雨の島のイメージがありますよね。 

私もそう思っていたのですが、移住するまでに3回屋久島を訪れて、山に入ったときに一度だけ少し雨に降られた程度だったので、そんなに降らないのだなという印象でした。 しかし移住して約1カ月後、『雨の島、屋久島』を痛感する出来事が起こります。

 

2019年5月18日、屋久島は50年に1度という記録的豪雨に見舞われました。 登山客約300人が土砂崩れなどの影響で下山できなくなり、全国ニュースとして取り上げられていたので覚えていらっしゃる方もいると思います。 

その日は勤務先のホテルへ出勤し、いつも通り業務をこなしていました。次第に強くなる雨脚はいつしか猛烈な雨となり、目の前の道路は一瞬にして冠水。よくバケツをひっくり返したような雨と言いますが、そんなものでは足らず、バスタブごと何度も何度もひっくり返しているような勢いでした。 

いまだかつて経験したことのない大雨、公共交通機関は全てストップし、ホテルは宿泊先のない方たちであふれかえりました。宿泊対応をしながら一夜を越し、翌日宿泊者で山に登っていた方たちとガイドさんが無事に戻ってきたときには本当に安心しました。離島で災害が起こるということの意味を、身をもって知る、忘れられない出来事となりました。 

 

このように、時に脅威にもなる屋久島の雨ですが、潤いを増し生き生きとした苔の森、水が循環し澄み切った川や海、大きく美しい虹など、自然の厳しさと同時に素晴らしさもそこにはたくさんあります。

さらに豊かな自然を育む雨を降らせるための雲が発達しやすい場所でもあり、ぽこぽこと雲が作り出される様子はまるで“雲製造所”のようで、すごくかわいいのです。 

そして雨といえば雷もつきものですが、島の真上からドーンと島中に鳴り響くような雷鳴は大迫力で、そのスケールの違いに驚きました。

雨の多い島だからこそ出逢える景色も屋久島の魅力のひとつだと思います。屋久島を訪れた際には雨もたのしみ、雨上がりにはぜひゆっくりと空を見上げてみてください。

三島佳奈

松江市浜乃木のライフスタイルショッブ「志庵」オーナー。「心と体に佳いものを」をコンセプトに、2年間暮らした屋久島の食品や工芸品などのほか、日々の暮らしに寄り添う洋服と雑貨を扱う。

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