読みもの

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創る【松江市】〈松江和紙てまり・藍てまり作家 絹川令子さん〉

松江ならでは 糸と和紙のコラボレーション

球体に糸でかがった麻の葉などの模様と、ちぎり絵の草花などが印象的な松江和紙てまり(島根県ふるさと伝統工芸品指定)。藍染めの糸で緻密な幾何学模様をかがる藍てまり。手仕事のぬくもりが伝わるてまりが多数並ぶ工房へ「松江和紙てまりの会代表でもある絹川令子さんを訪ねた。

もともと、絹川さんの義理の母である故絹川ツネノさんが、夫の赴任先だった熊本で肥後手まりの技を習得し、松江に戻り出雲民芸紙と出会い、同民芸紙を使って考案したのが松江和紙てまり。刺しゅうかがりとちぎり絵の両方を生かした松江ならではのてまりだ。

木毛(もくめん)という木を細く加工した緩衝材を糸で丸くくくって地玉にしているため、柔らかな手触りに。赤ちゃんも心地よさそうににぎにぎするそうで、飾りとしてだけでなく玩具としても優れている。

ツネノさんが高齢となり、弟子の皆さんが頑張って作り続けている姿を見て、「すたれていくのは嫌だな」と感じた令子さん。弟子の皆さんの勧めもあり、制作を始めた。

とはいえ、「守らねばという使命感ではなく、この地ならではのものということに魅力を感じ、作ることが面白いから続けている」。

かがり糸は、フランス刺しゅうの糸や安来市の天野紺屋が手掛ける藍染めの糸を使用。フランス刺しゅう糸は、色が豊富で、つややか。光沢が出て仕上がりが美しい。

素朴な味わいの藍染めの糸は濃淡合わせて5色だが、色の組み合わせによって全く表情が変わってくる。

てまりの下地やちぎり絵に使うのが出雲民芸紙。色柄が多彩で、丈夫。ちぎった部分のケバがいい味わいを醸す。小さな紙片も雰囲気のある仕上がりに欠かせない大事な一片となる。

制作時に心がけているのは「基本を大事にすること」。その上でアレンジを加える。

「人まねをしないで、新しいものを考える、クリエーティブな人だった」ツネノさんの姿を見ていた令子さんも、時代に合うような新たな工夫を施し、飾るてまりのほかに、ネックレスなどのアクセサリー類も手掛けている。

多くの人たちとの関わりや、見るもの聞くもの、生活全般、全てのことが創作の源となり、今後も「楽しみながら、よりよいものを作っていきたい」と話す令子さんの明るく元気な笑顔が頼もしい。

プロフィール

きぬかわ・れいこ 1950年生まれ。

松江和紙てまりの会代表。義母・絹川ツネノさんが始めた松江和紙てまりを仲間とともに継承する。出雲かんべの里(松江市大庭町)にあった工房を2020年に同市内中原町に移転し、制作に加えて体験教室も行っている。

問い合わせは

電話:0852-33-7973(9:30~16:00、火・木曜日休み、体験は要予約)。

ホームページ「松江和紙てまり工房」で検索。

山陰中央新報社文化センター松江教室で、11月8日に藍てまりづくり講座を開催。

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