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創る【米子市】〈画家・松下順一さん〉

その場の空気感まで伝わる水彩画

伯耆富士、出雲富士ともいわれる名峰・大山の姿を透明水彩絵の具で描く登山家でエッセイストでもある画家の松下順一さん(68)。「山猫山荘」と名付けられた山小屋風のアトリエを訪ねると、数えきれないほどのピッケルコレクションを背に、笑顔で迎えてもらった。

小学生のころに親と大山を歩いて山が好きになり、以来、国内外の山や岩登りを楽しみながら好きな絵を描いていたが、30代で山岳画家の山里寿男さんと出会い、本格的に山を描くようになった。

 山の天気は変わりやすく、山里さんからは「早く描きなさい」とのアドバイス。風景を見て構図を考え、その瞬間を絵に落とし込むまでおよそ5分。1000枚描き、100枚に1枚くらいいいものが描けるようになるも、今度は「描き慣れて面白くない」と山里さんの厳しいひと言。描き慣れた場所でも、毎回きちんと見て、手早くスケッチ。その後、描きためたスケッチに色付け。「完成まで長く楽しめるのも絵のいいところ」と話す。

大寒明けの大神山神社を描いた作品は、寒い中でも、春に向かって空が少し明るくなってきていることが感じられるような、微妙なニュアンスが伝わる。これが水彩の魅力。若いころの作品は色が濃く、書いてやろうという思いばかりが入っていたと振り返り、少し足りないくらいがいいと今は思う。

 大山は、登る感動もあるが、東西南北、近景、遠景、季節でも全て異なり、同じ場所で何回描いても同じ絵にならない。10代から登り、「今もなお好きな大山の魅力を伝えたい。今後もいろいろな場所から見える大山を描いていきたい」と松下さん。まだまだ新たな大山に出合えそうだ。

プロフィール

まつした・じゅんいち 1955年生まれ。

10代から山登りを始め、山の会の機関紙などに挿し絵を描く。30代、山岳画家の山里寿男さんと出会い、本格的に山を描き始める。水彩画のほかに、ペン画なども手掛ける。鳥取県内外で、作品展も多数開催。著書・共著に「大山を歩く」「悠遊大山」なども。

松下さんが描いた絵を用いたグッズなどの取り扱いは、米子まちなか観光案内所、ホテル大山しろがね売店、長岡名産堂などで(取扱品は店舗によって異なる)。

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