SPECIAL TOPICS

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島根の山の恵み いのちを生かす ~ジビエ肉やクラフト製品として~ 前編

深刻な有害鳥獣被害と資源の有効活用

 野生鳥獣による農作物の被害が深刻な問題となっている。島根県の2019年の有害鳥獣による農作物の被害金額の合計は7,892万円となっており、その中でもイノシシの被害が85.9%を占めるほか、ノウサギが3.8%、ニホンシカが3.2%となっている。被害が増えた原因として、里山の過疎化によって耕作放棄地が増えたことや、狩猟者の高齢化が進んだことなどが挙げられる。
 近年、イノシシや鹿を捕獲し被害を軽減するとともに、駆除した野生鳥獣をジビエ肉や革製品などの資源として有効活用する取り組みが各地で行われている。また、狩猟技術や解体などのノウハウを次世代へつなげようとする活動も始まっている。これらの取り組みを行う人々を通して、貴重な「いのち」を大切にして地域づくりに活かしていく方法や、山の未来について考える前編。

美郷町

“イノシシ”の縁が、地域を元気に!

 島根県の中央部に位置し、面積の大半を山林が占める美郷町。1995年ごろからイノシシによる農作物の被害に悩まされていたが、地域住民が一丸となって行った獣害対策が、個性ある地域づくりにつながっている。その秘密は「主役はイノシシではなく、ここに暮らす私たち人間」という住民の意識の高さ。イノシシの縁が地域に元気を広げている。活動が地域の女性の生きがいになっているという、イノシシの皮を使って革製品の製造をする「青空クラフト」を訪ねた。

お母さんたちの元気で地域が輝く 青空クラフト

 イノシシの皮を地域で活用したいという思いから、2011年に設立した「青空クラフト」。おおち山くじら生産者組合のイノシシ革を仕入れて、デザイン・裁断・縫製まで8人のメンバーが革製品をすべて手作業で製造する。

 もともと美郷町では養蚕業や縫製業が盛んに行われており、作業場は地元の人々のコミュニケーションの場だった。青空クラフトの活動は、「地元の資源の活用」「眠っていた技術の掘り起こし」「住民が集う “たまり場”の復活」とさまざまな役割を果たし、地域の元気を広げている。

青空クラフトのお母さんたちの声

・週に一回、みんなで集まって話ながら手を動かすのが楽しみ。水曜日にここに来ると思ったら生活にもハリがでるわ。

・縫製工場での技術が生かされている。技術を生かすことができるのはうれしい。革と布の違いはあるけど、いい製品を作りたい。

・「自分たちでやれることをやろう」と始まった活動なの。自分たちのできる範囲で。補助金ももらってないのよ。

・みんなでごはんを持ち寄ってランチ会をしたりもするわよ。そのときの計画はグループラインで。ランチ会の写真を送ったりね。

 地元のお母さんたちが、カレンダーの裏紙に書いた製図から型を取って、裁断し、一針一針丁寧に手作業で仕上げた革製品は、まさに一点もの! ぜひ手にとってその温かみを感じて。

 活動については美郷町山くじらブランド推進課(℡0853‐75‐1636)まで。

美郷町で食べる 山くじらグルメ

★山くじら…古くから獣肉を食べることを良しとしない風潮が強かった江戸時代に、イノシシ肉を山の鯨「山くじら」と呼んで食べていたことに由来する。

そら豆の「山くじら定食」 1,530円~

(2人以上で3日前までに要予約)

 粗びきにした山くじら100%を使用した食べ応え抜群の山くじらハンバーグと、山くじらの炒め物、しし汁がついた山くじら尽くしの定食。山くじらハンバーグ定食(890円、1日5食限定)もおすすめ。

 

そら豆

住所:美郷町久保740-7【MAP】

電話:0855-74-6033

営業:11:30~14:00

定休日:土・日・祝日

ベーカリー卯月の「山くじらバーガー」 500円

(水・土限定販売)

 山くじらの粗びきミンチ100%を使ったパテと、山くじらのももスライスのしょうが焼きを挟んだ一口で二度おいしいバーガー。トマトとタマネギのソース入りで、さっぱりと食べられるので山くじら初心者にもおすすめ。

 

ベーカリー卯月

住所:美郷町浜原287-1【MAP】

電話:0855-74-6433

営業:10:00~18:00

定休日:日・月・木曜日

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