SPECIAL TOPICS

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新茶の季節到来~山陰お茶事情

新茶の季節到来 ~「お茶(たばこ)さこい♪」から始まる山陰お茶事情

 夏も近づく八十八夜…立春を1日目として88日目にあたる時期は昔から茶摘みの目安とされています。近年温暖化の影響はあるにせよ、山陰地方はおおむねこよみ通り5月初旬から始まるそう。

 私たちの暮らしに根付いている「お茶」の基礎知識と、お茶にまつわるご当地ネタをご紹介。

日本茶の種類

 茶の木から採取する茶葉は、栽培方法や摘み取る時期、製造工程で緑茶や番茶、ウーロン茶、紅茶など多彩な「お茶」に変化します。

 その年に最も早く出た新芽を一番茶、摘んだあと伸びてきた順に二番茶、三番茶…と呼び、若いものほど上質でうま味が強いのが特徴です。ここでは山陰でよく飲まれている日本茶を紹介します。

抹茶

新芽の出始めに覆いをして育て、摘んで蒸した葉を揉(も)まずに乾燥させ、茶臼でひいたもの。覆いをすることで渋みの元・カテキンの生成が抑えられ、甘味・うま味が強くなる。

抽出温度/80~90℃。湯温が低すぎると泡だちにくくなる。

玉露

抹茶と同様に覆いをし、摘んで蒸した葉を揉んで作る。煎茶よりも鮮やかな緑色で、渋味が少なく、甘味・うま味が豊か。

抽出温度/50~60℃の低温でじっくり風味を引き出して。

煎茶

新茶を摘んで、蒸して揉んで作る、一般的な“緑茶”。うま味に加えカテキンやタンニン由来の苦味と渋味のバランスもよく、お湯の温度で味わいの変化を楽しめる。

抽出温度/上級のものは70℃くらい、普段用は90℃ぐらいの高めの温度でも。温度が高いと苦味・渋味を、逆に低いと甘味とうま味を引き出せるので、気分やシーンに合わせて。苦味が出にくい水出しはまろやかな味に。

玄米茶

煎茶や番茶に、炒った米を加えたお茶。茶葉は二番茶などを使うので比較的安価で、米の香ばしさが特徴。

抽出温度/90℃前後の高温でOK。

ほうじ茶

煎茶や番茶を炒ったもので、独特の香ばしさが好まれる。主には二番・三番茶から作るが、上質なものは一番茶から作ることも。

抽出温度/90℃以上で香りとうま味をたっぷり引き出そう。

番茶

三番茶や四番茶など成長して固くなった茶葉を蒸し、炒って作る。山陰では揉まずに作ることが多く、大きなままの茶葉や小枝も含む。販売される袋が大きいのはそのため。食事に合わせることが多い。

抽出温度/100℃近い温度で。ヤカンなどで煮出すことも。

山陰ならではの「お茶(たばこ)」時間

「たばこ」が大事!

 家の前を通りがかった近所の人や、ちょっとした用事で訪れた人を「まあ上がってお茶でも」と招き入れてしまう、それがこの地方独特の文化です。「たばこ」とは「休憩、一休み」の意味。ポットや急須に茶葉がセットのように常に準備してあり、いつでもお茶を入れられるようになっています。

お茶口に甘いお菓子だけでなく、煮しめや漬物が出てくるのもこの地域ならでは。

「湯のみは小さく、何杯も」がお約束

 ほんの2口ほどで飲み切ってしまえる小さな湯のみに、「もうごちそうさま」と断ってもお代わりが注がれるのを経験した人は多いでしょう。煎茶道で使うような小さな茶器を普段から使うのは、全国を見てもあまり例がないように思います。

 回数を注ぐことでお茶の香りや味わいの変化を楽しみ、「もう一杯いかが」と会話のきっかけを作る。山陰ならではの粋なコミュニケーション術ですね。

抹茶も日常的にたしなむ?!

 人口の割にお茶屋さんが多いのが山陰。特に松江地区は、茶人としても知られた松平不昧公の影響もあるのか、日常的に抹茶を飲む習慣があります。これも全国的には珍しく、お茶業界では「文化度が高い」と評価されているそうです。各家庭で作法にとらわれすぎずに親しんでいるのも、またいいところです。

 

取材協力

お茶の三幸園 代表取締役・日本茶インストラクター 大島正也さん

住所:松江市学園南2-16-5

電話:0852-25-0885

 ちょっとした休憩や、人と人とのやりとりのきっかけとして「お茶しよう」という言葉を使う私たち。日常の中に「お茶」が大事にされ続けるように…そんな気持ちでお茶のある暮らしのお手伝いをしています。

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