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島根県社協「暖暖だより」 誰もが安心して暮らせる福祉のまちづくり<PR>

人・そだて 人・ともに 人・くらし わが島根(まち)づくり

島根県社会福祉協議会(県社協)は県全体をひとつの「まち」ととらえ、ここで暮らす一人ひとりを大切にし、福祉の人材育成や子育て支援、地域住民や団体同士のネットワークづくり、そして住民が支え合いながら安心して暮らせる地域づくりを推進するために、さまざまな活動を行っています。

今回は「災害時の福祉支援」について紹介します。

社会福祉協議会(以下、社協)は、地域住民の安全・安心な暮らしを守るため、日常から災害などの非常時まで切れ目のない支援をしています。災害時、市町村社協が設置する災害ボランティアセンターの立ち上げ・運営支援を通じた住民支援は県社協の重要な役割です。

災害が頻発する今だからこそ知っていただきたい、社協の災害福祉支援や、「もしも」の時に力を発揮する平時の地域づくりについて、日野ボランティア・ネットワーク代表の山下弘彦さんに聞きました。

 社協の災害時の支援は「地域・住民が主体」 

― 地域での社協の役割を教えてください。
社協の使命はまちに住む一人一人の「ふだんの暮らしの幸せ」を守ることです。福祉の分野で公的な制度やサービスの対象からこぼれてしまう困りごとをキャッチし、関係機関と連携して適切な支援につなげたり、住民同士の協力によって解決できる仕組みづくりを進めたり、さまざまな形で地域に寄り添っています。幅広い支援の中で共通しているのは、あくまでも裏方として地域・住民が主体となるように後押しする点です。

― 災害時には災害ボランティアセンター(VC)を通じて支援します。
災害VCは、被災地で支援を必要とする人と、全国から駆けつけるボランティアとして活動したい人をつなぐ拠点になります。ニーズの把握、ボランティアの受け入れ・調整などを円滑に行い、1日も早い復旧・復興を目指します。平時には、人材育成・ネットワーク形成に取り組んでいます。
― 社協が災害支援をする意義を教えてください。
災害VCは、単に人と人をマッチングして家屋の泥出しや片付けをすることが目的ではありません。例えば、ボランティアで高齢者の住宅に入って段差の多さに気づけば、専門職につないで手すりを取り付けることもあります。目の前の困りごとに対応しながらも、「普段の暮らし」に焦点を当てた支援は特に大切です。平時から専門性を活かしたきめ細かいサポートを行い、地域や関係機関とのネットワークを築いているからこそできる支援があります。

 平時の「地域のつながり」は災害時にも生きる 

―日野ボランティア・ネットワークでは鳥取県日野町の7 5歳以上の高齢者だけで暮らす方を訪ね、誕生月に手作りプレゼントを手渡す活動を長年続けておられます。
高齢者を元気づけるためだけでなく、町内のつながりや信頼関係を構築することも大きな狙いです。教訓は同町も被害を受けた2000年の鳥取県西部地震でした。高齢化が進む地域が被災すると、日々の暮らしの課題が一気に深刻化します。その一方、ボランティアとして訪問しても警戒され、平時からの地域とのつながりの重要性を実感しました。誕生月訪問は20年以上続く活動で、町内外の子どもから高齢者までが参加し、互いに助け・助けられる、そんないい関係ができています。


―災害時であっても、SOSを出しづらいケースが多くあるそうですね。
ある年の豪雪時に訪ねた高齢者宅で、誕生月プレゼントの活動をしていることを話すと、「実は…」と、雪かきで困っていることを打ち明けられたことがあります。困っていることがあっても遠慮したり、どう頼んでいいか分からなかったりするケースは多いです。「助けて」と声を上げやすいのは、顔の見える関係性があってこそ。平時の地道な取り組みが有事の備えにつながることへの理解が広がるとうれしいです。

お話を聞いたのは…

日野ボランティア・ネットワーク代表

山下 弘彦(やました・ひろひこ)さん

鹿児島県出身。1966年生まれ。2000年10月に発生した鳥取県西部地震で被災した同県日野町の復興支援ボランティア参加をきっかけに、民間のボランティア団体「日野ボランティア・ネットワーク」を立ち上げた。鳥取県内外の地域活動、地域福祉活動、防減災活動の取り組み支援を行うほか、全国各地の被災地支援を行っている。

誰一人取り残さない被災者支援を目指して

個別の支援計画で生活再建へ
被災者の早期の生活再建を目指す「災害ケースマネジメント(CM)」の体制づくりが全国で進みつつあります。災害CMは、被災者一人一人に寄り添い、個々が抱える課題に応じて行政・社協などの関係機関や福祉専門職が連携して、被災された方の主体的な生活再建を支援する新たな手法として注目されています。
中でも訪問・見守りで支援を必要とする被災者を見つけ状況を把握する「アウトリーチ」は大きな特徴とされ、早期に実施することで災害関連死を防ぐことも期待されます。

災害CMが適切に機能するには、平時から連携が想定される機関・団体がつながり、地域住民の理解を得ておくことが重要です。県社協では、災害CMの普及に向けた検討をすすめており、研修・モデル事業などを実施しています。

被災経験を共有し、備える“カフェ”
2024年8月、モデルに選定されている大田市内で開かれた「みんなで備える防災カフェ」。行政や消防、地元のボランティア団体などが、防災食の試食や防災グッズ作りの体験ブース、防災備蓄品や段ボールベッドの展示ブースを開設。地元を中心とした来場者は各ブースを回りながら防災の大切さを身近に感じていました。
イベントは、大田市社協が18年の島根県西部地震の被災経験を風化させないよう、発災翌年から毎年開催。従来のシンポジウム形式から、よりオープンにしたいと2年前から「カフェ」と題して開いています。
参加する各機関・団体にとっては年に1回は顔を合わせる機会となり、災害CMに大切な顔の見える関係づくりの一環にもなっています。

被災地で福祉支援にあたる専門チーム「しまねDWAT」

大きな災害が起きた時、被災地で福祉支援にあたる専門職のチームが島根県内から派遣されることがあります。「しまねDWAT」と呼ばれ、被災地のさまざまなニーズに対応できるよう、社会福祉士や介護福祉士、保育士など、登録研修を受けた専門人材で構成されます。

 

DWATは東日本大震災を教訓に全国で設置が進み、島根では2015年に発足しました。初の活動の場は、24年元日に起きた能登半島地震の被災地でした。計13人が交代しながら、被災者を一時的に受け入れる金沢市内の1.5次避難所で約2週間活動。ニーズの把握から、必要な支援の見極め・助言、避難所の環境整備、情報提供などに取り組みました。

活動者の声

社会福祉法人みずうみ/杉谷健さん(介護福祉士)

現地には家族を亡くした方、家を失った方などさまざまな境遇に置かれた人がいて、最初に考えていた「道筋を示す」ことの難しさを痛感しました。そんな中、信頼関係を丁寧に築くことを大切に、次の支援者にバトンを渡すことを使命に活動にあたりました。

社会福祉法人島根ライトハウス/田中康太郎さん(社会福祉士)

命や健康を守る各専門チームが拾い切れないニーズを我々が拾いつつ、被災者が自立できるように現状を見極めたサポートをすることを現場では求められました。DWATの活動意義は「被災者の人権を守る」点にあると振り返って感じています。

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