読みもの

読みもの

創る<木製ベンチ作家 日野 健さん>(出雲市)

優しく穏やかなベンチが家族の象徴に

 緻密で端正なフォルムに、ぬくもりのある優しく穏やかな雰囲気が漂う木製ベンチを制作する日野健さん。

 木工芸へ進むきっかけは京指物の棚。「繊細だけど力強く、きれいだなと思った。それまで見てきた工芸品とは違う、初めて見る姿に感動した」。福知山高等技術専門校で家具制作の基礎を学び、宮崎や京都での修業を経て独立。Uターン後、2017年に木製ベンチを制作する「Bench Work Tatenui」を設立した。

 「ベンチには垣根がなく、そこに座る人と人のつながりや関わりが生まれるところが魅力」と日野さん。主に使用する木材はクリ、クルミ、サクラなど、実のなるフルーツウッド。「この木いいなと思って選んでいたら、フルーツウッドが多かった」と話し、心ひかれる材は、日野作品の特徴の一つとなっている。

 修業時代、師匠の井口彰夫さんに言われた「木にほれたらあかん」は今も心に刻まれている。木を好きになり過ぎると切りたくなくなり、適材適所の判断がしにくくなるため、一歩引いた客観性が大事という意味が「言われてからずいぶん後になって分かった」と振り返る。

 制作は「妄想を形にしている」と笑うが、木を見極め、使う人の環境や暮らし方など背景にあるものを大切にし、人も木も変化していくことを考慮しながら提案する。「家族の象徴になっているとうれしい」と日野さん。

 見たことがないものを作りたいとの思いを原動力に、ベンチの可能性を広げていく。

本文を入力してください

<プロフィール>
ひの・たけし

1977年出雲市生まれ。福知山高等技術専門校家具工芸科卒業後、宮崎や京都での修業を経て独立。2017年に「Bench Work Tatenui」(出雲市平田町5469-1 電話0853-25-9394)を設立。

HPはこちらから

(記事は2022年2月14日現在)

一覧へ戻る