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おもひでBOX
おもひでBOX~思い出とともに次世代につなぐ
おもひで屋(出雲市)
タンスの奥にしまわれたままの着物をリメークし、新たな装いのアイテムとして生まれ変わらせているおもひで屋(阿部早苗代表)。県内外から注目を集めている新たな取り組みが始まったと聞き、出雲市塩冶町のおもひで屋を訪ねた。
代表でデザイナーの阿部さんが、着物のリメークを手掛ける「おもひで屋」を始めたのは2001年。以来、たくさんの着物をワンピースやジャケット、コートなどにリメークし、新たな装いの機会を作り出し、着る人だけでなく、見る人にも着物の魅力やリメークの良さを伝えてきた。
これまでも各地でリメーク服のファッションショーを開いてきたが、今年は島根県のサステナブルの取り組みに協力し、いずも産業未来博やグラントワでも作品を披露した。
着物リメーク服作りを続ける中、今春には、新たに「おもひでBox」の取り組みをスタートした。故人の思い出がある着物や引き継いだ着物、自身の終活として、着物や帯をバッグやポーチなどの日常使いの小物に仕上げるもの。
お客さんから「自分の着物もたくさんあって、亡くなった母の着物も引き取り、どうしましょう」「着物をいただいたがどうしたらいいでしょう」といった相談が寄せられることも多く、「着物を洋服にリメークしても着る機会が少なく、またしまい込んでしまうことになりそう」という声も聞かれたことがきっかけとなり、小物にして使い、次の世代へとつなぐのも意味のあることでは、との思いから生まれた。
形を変えて身近に置くことは故人を大事に思うことにもつながり「大切に使いながら、その人をしのぶことは、忘れてはいけない心では。その思いと共に伝えられたら」と阿部さん。
Boxは、3万円、5万円、10万円の3コースがある。
一例として、3万円でトートバッグ(中)、ポーチ、袱紗(ふくさ)、マルチケース、5万円でトートバッグ(大)、クッション、ポーチ、マルチマット、袱紗、メガネケース、マルチケース、10万円でトートバッグ(大と小)、着物ベア、テーブルランナー、クッション、ポーチ、マルチマット、袱紗、メガネケース、ブックカバーをそれぞれ制作する。詰め合わせ内容は、コースの料金範囲内で選べる(点数は内容によって変動)。
上質な着物地を使って、洋裁の1級、2級技能士資格をもつ若手から80代の熟練の職人が丁寧に、心を込めて仕上げる。
「思い出がよみがえり涙が出ました」「いいものを作ってもらってありがとう」「一生大事にします」「仏壇に供えました」などの声が、阿部さんをはじめ職人たちの喜びややりがいにもなっている。
今月初めに開かれた内覧会・相談会でも、着物持参で熱心に相談する人や、阿部さんが指導する洋裁教室(火・水曜日)で、自身で作ってみたいという意欲的な人もいて、リメークの輪が広がっている。
もともと、みなさんの思い出に関わることができたらとの思いから名付けた「おもひで屋」。「これからも思い出にこだわって、関わっていけたら。大切なこと・ものを次世代につなげていきたい」と話した。