読みもの
創る【松江市】〈革職人・肥後由紀さん〉
総手縫い仕上げのオンリーワンを
「使うほどに手になじみ、味わいが出て、良くなっていくところが革の魅力」と、天然素材にこだわり、革の選定から、裁断、貼り、縫う、磨くまでの工程を一人で手掛ける革職人・肥後由紀さん(41)。蕾(つぼみ)が時を経て花開くように、手渡した革製品がお客さんの手でそれぞれの完成形へと育っていくとの思いから、工房名を「蕾」とした。
4兄弟の母でもある肥後さんがレザークラフトを始めたのは、長男を身ごもったとき。「革製の母子手帳ケースを作って、子どもとともに歩み、成人するときに通帳ケースなどとして子どものころの思い出も一緒に渡したいと思った」。長く使うことを念頭に丈夫で、修繕もできるよう手縫いで仕上げた。「改良を重ね、完成形になったのは三男のとき」と笑う。よりシンプルに使いやすく、年齢や性別関係なく誰でも使える形だ。
当初、母子手帳ケース制作がメインだったが、一人一人全て異なるオーダーに応えながら技術を磨き、今では幅広く対応し、注文主のライフスタイルに合わせた使いやすさを第一に考え、「納得する以上のものを作りたい」と励む。
肥後さんは、主にイタリアンレザーを使用し、一針一針感覚を研ぎ澄ませて縫っていく。一目でも気を抜くと全てがダメになる緊張の手縫いは「大変だけど、楽しいところでもあり、ワクワクしながらやっている」と表情が輝いた。
以前、ワークショップに参加した大学生との付き合いが長く続くなかで「革との最初の出合いがここでよかった。出合わなかったら革の良さが分からなかった」とうれしい言葉をよせてくれたことから、今後もワークショップや丁寧な手仕事を通して「若い世代にも革の良さを伝えていきたい」と前を見つめた。
プロフィール
ひご・ゆき 1982年生まれ。
2008年レザークラフトを始め、14年革製母子手帳ケース専門店「革工房蕾」開業。18年雲南市「食の杜」に工房兼ショップをオープンし、21年松江アトリエ店オープン。22年レザークラフト教室スタート。直売、オンラインショップのほか、マルシェリーズ内「ローズマリー、イベントなどでも販売。
22年雲南産ジビエブランド「UNNAN SHISHI LEATHER」立ち上げ。
色彩コーディネーターやレザーソムリエの資格も持つ。
問い合わせは
●メール:r.tsubomi.0803@gmail.com
●TEL:070-9006-8835で。
●詳しくはホームページ「革工房 蕾」で検索。