読みもの

読みもの

創る【境港市】〈木鳥作家・門永 哲郎さん〉

一瞬で心をつかまれた 木鳥(ことり)の表情

ある日、窓辺にたたずむ一羽のコハクチョウが目に飛び込んできた。「えっ!?」。生命力にあふれ、心情まで伝わってくるようなまなざしに、一瞬で引き込まれた。シナ、ホオ、ツバキなどで鳥や昆虫などの姿を彫る木鳥作家・門永哲郎さん(64)の作品との最初の出合いだ。

 

 

門永さんは島根半島の山中でオオルリに出合い、野鳥や木、花の美しさに感動し、山を歩き写真に収めることに熱中。しかし親となり、子育てしながら家の中で色鉛筆を使ってスズメを描いてみたところ、なかなかの出来栄え。さらに立体にしてみたいとバルサ材で作ったシジュウカラもうまく仕上がったことをきっかけに、バードカービングに興味を持つ。

バードカービング作家の遠藤登さんに師事し、バードカービングを手掛けるようになったが、自分らしくもっと自由に、動きのある豊かな表情を表現したいとの思いから、「木鳥 〜ことり〜」と名付けた独自の創作をスタート。木はやわらかく、イキイキとした様子が表現しやすく、門永さんが思い描く作品の制作にぴったりだった。

 

 

創作に励んでいたある日、同世代の友人が亡くなり、「人はいつどうなるか先のことはわからない。木鳥を知ってほしいと、公募展などへ出品したところ、国内外で数々の賞を受賞。作品展でも高い評価を得て、作家活動を本格化させる。

 

 

自分の感性を大切に、自分なりの“生きている鳥”を作りたい。鳥を見たときの空気感も伝わるように、周辺の植物なども併せ、鳥の動き、姿をきちんと表現したい。例えばくちばし。なぜその形なのか、どんな生活環境か、「リアルに作らないと、その鳥を表現したことにはならない」と細かなところまでリアルを追求する。

門永さんが特に好きなのはオオルリで、「青い鳥は特別」という。そのときどきの光で見える、さまざまな「青」を閉じ込めるため、アクリル絵の具、油彩絵の具、岩絵の具、インクなどを使い分ける。

近年は動画でさまざまな鳥の生態を見ることもできるため、日本では見ることができないカラフルな鳥などにもチャレンジしていきたいと話し、今後も、鳥たちと向き合い、観察と創作の日々を重ねていく。

 

プロフィール

かどなが・てつろう 1959年生まれ。

高校卒業後9年間過ごした東京から境港市に帰郷した際、オオルリに出合う。その青い姿に感動し、野鳥写真にのめり込む。その後、鳥の絵を描き始めるも、新たな表現を求めバードカービングを始める。しかし、もっと自分らしい表現を追求し「木鳥-ことり-」という作風を確立した。国内外での受賞多数。

●Facebook「門永哲郎」で検索。

2024年4月27日(土)~6月23日(日)石谷家住宅(智頭町)で作品展を開催(要入館料)。

 

一覧へ戻る