グルメ
祖父の味を継承する繊細で香り高い逸品<手打ち蕎麦と甘味 満星>米子
無類の蕎麦好きの女性が、祖父の店を引き継ぎたいと南部町産の蕎麦粉にこだわって打ちたてを提供。
やや薄めに伸ばして切る麺は適度に蕎麦殻が入り、みずみずしく繊細な食感の中に強い香りも。エビや三つ葉、玉ねぎなどの具を円筒形に揚げたかき揚げざる(1,200円、写真)で堪能あれ。
メニューのもう一つの柱がレトロな甘味。通年で出すふわふわのかき氷(写真はみるく、950円)やミルクセーキのほか、秋冬はぜんざい、焼き団子も提供予定。
祖父の打っていた蕎麦との違いは、つぶつぶと黒く見える蕎麦殻。適度に入ることで蕎麦本来の香りがぐっと増すが、細めに切られており口当たりは上品だ。
南部町産の蕎麦粉100%で毎日使うだけを打つ。蕎麦の実と大山、日本海に由来する店舗のロゴどおり、地元の食材のおいしさを活かしている。
また、ごろんと大きなかき揚げにも注目。桜エビ、エビ、三つ葉、玉ねぎの具材が中からつぎつぎに出てくる。衣もサクサクと軽いところともっちりとした芯の部分、それぞれの食感が実に楽しい。
つゆは米子市の蔵元の醤油をベースに、宗田節(そうだぶし)やサバ節がふわりと香る。あっさりとキレがよく、蕎麦とかき揚げを絶妙につないでくれる。
とり南蛮(温1,230円、せいろ1200円)も人気。
大盛り200円増、炊き込みご飯やお子様うどんといったメニューも。
甘味で通年提供するというかき氷は、驚くほどふわふわな氷のくちどけに感動。時間が経ってもほとんど溶けない秘密は、年代物の削り器で細かく丁寧に削っているからだそう。
シロップはいちごやマンゴー、抹茶などで、季節ものも登場予定。
カラフルな“おいり”が乗った「みるく」(950円)は、優しいミルク風味に、おいりの甘さとパフッとした食感がアクセント。
「みつぼし」(1,100円)はほうじ茶みるくきなこ。いろんな味が楽しめるうえに、白玉も付いて大満足!
そんなかき氷の氷を使ったミルクセーキ(630円)は、店主のお母さんが昔から親しんだ思い出の味を再現。
削り氷と、卵黄やミルクなどで作っており、味わいは微細氷が舌に心地いいバニラアイスといったところ。昭和末期のガラスコップが、なんとも懐かしく愛らしい。
これからの季節には、ぜんざいや卓上で自分で仕上げる焼き団子などもお楽しみに♪
代表の小椋 唯さんが、子どものころから大好きだったという祖父の蕎麦。
もともとは「スター時計店」という時計屋を営むかたわら、店内一角に趣味で打っていた蕎麦をふるまうスペースを設けたことから始まった。
高齢で蕎麦打ちが難しくなり、店をたたんでからも続けたがっていたその気持ちを、孫娘が受け継いだ。
「父がパンを作っていたことから、小学生のころから“粉はお友達”。蕎麦を打ち始めたのは店を継ごうと決めてからなのですが、そのためか大きな苦労なく手になじんでくれました」
現在90歳を超えた祖父は、店の再興で「とても喜んでくれて、すっかり元気が戻っちゃいました」。
そんなエピソードを知っていただく一品は、なんとも胸にあったかい。