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【奥出雲】<高原そば 壱心>奥出雲在来種の香り・甘み・コシを堪能

祖父・父が営んできた昭和の香り漂うドライブインに2023年4月開店、奥出雲産そばや同町三成に蔵を構える森田醤油など地産食材にこだわる。

中でも小粒ながら甘みや香り、粘りがひと味違う在来種・横田小そばで打つそばは絶品。

魅力を余すところなくいただける十割のざるそば(1,300円)は、「噛んで味わう」が信条の出雲そばらしい心地よいコシ、深い味わい。

自家農園でとれた季節野菜を薄衣でサクッと揚げた天ぷら盛り合わせ(600円、数量限定)も必須。

つやピカの仁多米おにぎり(120円)も添えれば完璧だ。

(写真は3品をセットで撮影)

 

「切れにくいように十割を打つのは本当に難しい。けれど、このおいしさを知ってほしくて工夫を重ねています」と店主・田尾海星さんがほれ込む横田小そば。

店舗のある三井野原エリアなど奥出雲周辺の在来種で、生産が途絶えかけていたという幻の品種だ。

粒は小さいが香り・甘み・粘りに秀で、太切りにするとその味わいはバツグン。

みずみずしさとコシの強さ、噛むほどに増すそば自体のうま味が一線を画す。

合わせるつゆは、サバやカツオなどの削り節にイリコ、こんぶ、シイタケなども合わせた出汁に、極上の丸大豆・木桶仕込みであまたのそば職人から信頼を寄せられる奥出雲の名蔵「森田醤油」のしょうゆを合わせたもの。

甘さを控え、スッキリしたコクが次のひと口を誘う。

メニューはこのほか奥出雲産そばを使ったものもあり、山かけや割子などが人気。

 

サイドメニューの中で、ぜひオーダーしてほしいのが天ぷら。

奥出雲特産の舞茸以外は基本すべて自家農園の収穫で、サクサクとした衣に包まれた味の濃い高原野菜は期待を裏切らない。

ちなみに農園の野菜は店舗横の販売所でも購入できるのでお土産におすすめ。

シメの仁多米の塩むすびは、もはや別腹と位置付けておこう。

甘辛い麹(こうじ)みそを添えていただけば、心もおなかも大満足だ。

 

お店は田尾さんの祖父と父が1986(昭和61)年に開業した、国道314号線沿いのドライブインにある。

真横を木次線が通り、タイミングが合えば列車が走るのを店内から間近に眺められる好立地だ。

どこか懐かしい雰囲気が残る店内には、スキーブームに沸いた当時を思い出させてくれる写真も。

線路を挟んだ店舗裏には所有するゲレンデもあり、冬場を中心に稼働してきたが、スキー人気の翳りから次第に車通りが減り、時代の移り変わりを感じるように。

店と一緒に成長してきた田尾さんは「このままではもったいない。自分もスキルを身につけ、ここでなにか始めたい」と考えた。

 

蕎麦のおいしさに目覚めたこともあり、高校卒業後いったんは企業に就職したものの、町内外でもファンの多い「山県そば」の門をたたき、7年の修業を積んだ。

「水とそば粉だけでできていて、品種や産地はもちろんその日の天候、水の入り具合で全く異なったものができるのが奥深くて…硬さや長さ、太さでも自分の個性が出しやすいのもおもしろいんです」

26歳、若き蕎麦打ち職人の眼差しはキラキラとまぶしく、どこまでも真摯だ。

 

高原そば 壱心

住所:仁多郡奥出雲町八川2965-6 【MAP】
電話:0854-52-0543
営業:11:00~15:00(L.O.14:30。そばがなくなり次第終了)
休み:月曜日、第1・3火曜日
駐車場:あり
Instagram こちらから

 

(記事は2023年9月30日現在)

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