滋賀県甲賀市のご当地グルメ・スヤキの専門店。

スヤキ…とは、もやしとネギ、麺を炒める、いわば“ソースをかけない焼きそば”だが、発祥の店として名高い同市・谷野食堂直伝の味は、素朴な見た目を裏切るうまさ（写真はスヤキ並650円に100円の目玉焼きトッピング）。

作り方はいたってシンプル。

麺は松江市の製麺所に依頼した中太焼きそば麺を使用、並盛で一般的な焼きそば麺１食分の倍近くあり、ボリューム満点。

ダシを加えて一気に火を通し、程よく水分を飛ばしながら炒め合わせて完成…この間わずか５分たらず。

シンプルなスヤキ（大800円、並、小500円）のほか、海鮮入り（1,000円）も。

トッピングは写真の目玉焼きと、とりもも（200円）を用意。

豚じゃなくて鶏？と思うところだが、「炒め油にラードが入るので、肉を入れるなら豚だろうと思って試作したんですが、なぜかうちのスヤキには圧倒的に鶏のほうがうまくて」と代表の福田 潤さん。

サイドには、とりもも（写真）やセセリ、ハラミ、ヤゲンなんこつ、ずりを鉄板で焼く一品（各400円、ミックス３品1,000円）や玉子スープ（150円）を。

最初はぜひそのまま、ダシのうまみで味わって。

麺はドライな質感で、口の周りに感じるかすかな脂の背徳感がまたいい。

２種類用意されたソースやホワイトペッパー、かつお節で作る“ぶし粉”、一味などで味変するのがだいご味だが、「結局何もかけないのが一番」とハマる人が多いそう。

記者も例外ではなく、あれこれかけては「合う！」とうなずいていたものの、最後はやっぱり“ス（素）”の味でぺろり完食。

「こだわらず好きなように楽しんでもらって、おなか一杯になってくれるのが一番です」と福田さんはにっこり。

男性のみならず、カウンターでサクッと食べていく女性の姿も。

中太麺は冷めてもモチモチで、持ち帰り客も多い。

福田さんのスヤキの原体験は、高校生のころバイト先で食べた“ソースをかけない焼きそば”。

「なんでこんなにおいしいのか興味がありました。そのうちにご当地グルメで『スヤキ』というものがあることを知り、仲間と実際に食べに行ったのが谷野食堂さん。もう衝撃でした、『うまっ！！』って」

弟子入りを申し出るも断られ、島根から何度か通っているうちについに根負けして受け入れてもらったのだとか。

スヤキの元祖と親しまれる谷野食堂は製麺所に端を発し、お金のない学生のために「安くてうまいものを腹いっぱい食べられるように」と考えた料理があっという間に名物になったのが始まりだそうだ。

名店の思いを引きつぐふくちゃんの「スヤキ」にも、シンプルな見た目の中に愛がどっさり入っている。