おでかけ・イベント
ちょっと気になる街の喫茶店
知らない街を訪ねた時、その場所の住民に愛されている喫茶店があります。
ちょっと一休みしたい時の香り高いコーヒー、小腹を満たすおいしいメニュー、人好きな店主…その街の人たちの生活を垣間見るような、街の喫茶店を訪ねてみませんか。
(記事は2023年9月28日現在)
●ふじひろ珈琲 出雲市
出会いがつながる本格珈琲店
珈琲豆は仕入れにこだわり、味や香りを落ち着かせるために焙煎してから4日間寝かせる。
5種の豆を使うブレンドをはじめ、各国のストレート珈琲に五感が目覚める。
名物の厚焼きトーストや、牛乳の代わりに生クリームを使い、カルーアリキュールが香るフレンチトーストの食パンは、出雲市の老舗パン製造会社・なんぽうパンが、小麦から厳選して同店のために焼き上げる。同社の「バラパン」のパンだけを仕入れ、オリジナルを提供しているのも同店だけ。
同社やお客とともに始めた東日本大震災のボランティア活動で、子どもたちに配ったのがきっかけだった。
マスターの伊藤博人さんは、大学を卒業後に東京で就職。帰郷を考えている時に、飲食店でたまたま出会った松江市出身の人の紹介でパッケージ会社に。
担当していた札幌で立ち寄った店の珈琲に衝撃を受けて開業を決意。1983(昭和58)年、チェーン店のフランチャイズとして開店し、91年に独立した。
大学時代はフォークにはまり、その頃の縁で某大御所とも親しいという伊藤さん。
さまざまな人との良縁がつながる“わらしべ長者”のような歴史を、珈琲を楽しみながらマスターに聞いてみて。
ふじひろ珈琲
住所:出雲市渡橋町1223‐1 くにびきビル1F【MAP】
電話:0853‐24‐1760
営業:8:00~18:00
休み:日曜日 ※盆、年末年始に臨時休業あり
駐車場:あり
HPはこちら
●シチューとコーヒーの店 あらびかコーヒー 松江市
来店客を包むアットホームな雰囲気
「シチューとコーヒーの店」を看板に掲げた開店当時から、人気を集め続けるのがインドカレーだ。
スープは鶏ガラから取り、クミンやシナモンなどを入れたこだわりの一品。3種の野菜とじっくり煮込むことで、小麦粉を使わなくても十分なとろみが生み出される。44年変わらない味に「懐かしい」という声が響くことも。
店の始まりは1979年。松江市出身で埼玉県に住んでいた国田和彦さんの趣味が高じ、「古里でおいしいコーヒーを届けたい」と脱サラ。東京の専門学校を経て、家族5人で松江に戻り、オープンさせた。妻の隆子さんも毎日店に立ち、支えた。
しばらくは手探り状態が続いたが、あっという間に市民が憩う場として街になじんだ。
11年前、マスターが交通事故に遭い、店の存続が危ぶまれた。忙しい両親の姿を見て「自営業はしない」と心に決めていた次女の英子さんが、「私がやるしかない」とバトンを受け継ぎ、家族3人で切り盛りするようになった。
今はマスターが店に立てる時間は減ったが、焙煎やコーヒーを入れる手つきは体に染みついており、マスターにしか出せない味を求める客も多い。「いつでも辞められる。だからもう少し頑張ろう」。合言葉を励みにしたアットホームな雰囲気が今日も来店客を包む。
あらびかコーヒー
住所:松江市袖師町7-30【MAP】
電話:0852-26-6365
営業:9:00~17:00
休み:日・月曜日、祝日
駐車場:あり
●SUNNY-SIDE CAFE(サニーサイドカフェ) 米子市
ほっとできる場所で 一期一会のひと時を
大正時代からあるという築100年の古民家を、当時の雰囲気のまま残した趣あるカフェ。
畳敷きの店内はシックで、穏やかな空気に包まれている。古いオルガンやピアノ、アンティークの調度品、器まで年代物で統一され、席に着くと肩の力が抜けていくのが分かる。
松江でカフェを10年営んだのち、移転先を探していた店主の小早川恵子さん。
ジャズの名曲「オン ザ サニーサイド オブ ザ ストリート」が好きで、この古民家の日が差す縁側を見て「まさにサニーサイドで気に入った」という。迷わず、店名は「サニーサイドカフェ」に。
メニューは定番のオムライスやナポリタンの他、季節のパフェやケーキ、ドリンクがラインアップ。特に、パフェはボリュームと美しいビジュアル、おいしさが共存し感動もの。定番メニュー以外は、その日仕入れた食材でメニューを決める。
「その日出合った食材で、何を作ろうかと考えるのが楽しい」とほほ笑む店主に「一期一会」の言葉が浮かぶ。特別な食器、こだわりの旬食材で作られた他にはないテイストのメニュー、そして心地よい音楽…現実から離れ、くつろぎのひと時をぜひ。
●ちいさなぎゃらりー・うつわ 益田市
店名の「うつわ」は「こころのうつわ」
扉の向こうは異空間だった。ライトを少し落とした店内は、窓から差し込む秋の日差しが、観葉植物たちの葉に映り輝かせる。
製の骨とう品や、螺鈿(らでん)細工の古だんす、チクタクと時を刻む振り子時計。
カフェのカウンター内から店主の浜岡昭恵さんが少しほほ笑んで迎えてくれる。
「素人ながら、ギャラリーがやりたくて」と、1996年駅前町にオープン。10年前に現在の地へ移転した。
6畳ほどのスペースがギャラリーで、展示は月替わり。プロ、アマ問わず貸し出し、予約は来年分も半分近くすでに埋まっている。
「無料でお貸ししますが、レイアウトは私に任せてもらっています。これが一番の楽しみだから」。
持ち込まれた作品をテーブルに全て並べ、どこにどう飾れば作品がより引き立つかしら、小物は何が合うかしら…浜岡さんの至福のひとときだ。
常連客も多く、同じ曜日に訪れ、いつもの席で新聞を広げる老紳士。絵や調度品に目をやりながら時を過ごす女性。浜岡さんがそっとコーヒーのカップを置く。
ギャラリーありきの店なので、メニューはコーヒーと紅茶だけ。「お客さまとのひと時が、わたしの『うつわ』を少しずつ大きくしてくださるの」。
1杯300円。心づくしのドリップコーヒーの香りがふわっと漂った。
ちいさなぎゃらりー・うつわ
住所:益田市あけぼの東町8-2【MAP】
電話:0856-22-1162
営業:9:00~17:00
休み:毎月16日 ※年末年始等臨時休業あり
駐車場:あり