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創る【松江市】〈陶芸家 石橋成美さん〉

うふふと楽しい気分になる器

あるクラフト展で目に留まった一枚のプレート。描かれていたのは羽を大きく広げた鳥。空をのびのびと自由に飛んでいるようで心が晴れやかになっていった。「家の周りにいろいろな鳥がきて、とても身近でかわいい存在。植物もそうですが、見ているとぼんやりイメージが浮かんできて、こんなデザインにしてみようかなとアイデアが出る」と話すのは鳥柄プレートの作者、陶芸家の石橋成美さん。夫の優(ゆたか)さんとともにこうや窯で作陶する。

高校生のころ、漠然と美術系を志望。友人と話していたときに「なぜか焼き物をしたいなという思いが湧いてきた」。土から製品になるまでの過程も含め「不思議だなー」と関心をもち、島根の窯元で焼き物の基礎を学び、その後沖縄の窯元で修業。

沖縄では山から土をとってきて精製し、釉薬(ゆうやく)づくりに使う灰も自分たちでつくるなど「一から自分たちでつくる作業が性に合っていた。してみたかったことに出会えて、面白いなと感じた」。

「自分のペースで進められ、もやっと考えていたものが形になっていくところが魅力」。今は、素朴で生活の中にあって何か気になるもの、ふっと力が抜けるようなものを目指し、使うときにうふふと楽しい気分になる器をつくる。「まだろくろが上手じゃないけど」と笑い、沖縄での修業時代を思い出しながら試行錯誤中と謙遜するが、成美さんならではのかわいらしい造形に、皆、頬が緩む。

以前参加したクラフト展で器を買い求めた人が、同展に出産子育てを経て再び参加した際にまた訪ねてきてくれたことがあり、「私の手を離れて、どなたかの食卓で使われていることは励みになる」と話す。

優さんの存在を尋ねると「近くに一緒の感覚でつくる人がいて、相談できるのは心強いと、お互い温かく見守り、サポートしながら自分らしく作陶する二人だから生まれる作品なのだと感じた。「いろいろな家庭の食卓で、さまざまなシーンに使われる食器をこれからもつくり続けていけたらと思う」と成美さん。

多くの人に「うふふ」を届けていく。

プロフィール

いしばし・なるみ 1975年生まれ。

島根では、八幡焼窯元の秦良次さん、はぜのき窯の佐藤康さんから焼き物の基礎を教わる。その後、沖縄の陶眞窯の相馬正和さんの下で1年、読谷壺屋焼陶芸城の金城敏幸さんの下で5年間修業し、島根へ戻る。2年前から本格的に、夫の優さんと「こうや窯」での作陶に取り組み、県内外のクラフト展に出展する。2025年1月山陰民窯展(米子しんまち天満屋)、2月山陰窯元展(イオンモール出雲)などに出展。

作品の取り扱いは、八百万マーケット(松江市カラコロ工房内)、島根県物産観光館(リニューアル後~)。

問い合わせはインスタグラム(@kouyagama_ishibashi_narumi)へ。

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