グルメ
十割蕎麦の魅力を存分に味わい尽くす<奥出雲前綿屋 そば処 なごみ庵>雲南
粘りが強い三瓶在来種で打つ十割蕎麦で勝負、6月の開店以来、山あいの店に客足が絶えない。
香り良く甘みを感じる麺は、冷たく締めて強いコシを、アツアツでもっちりした歯ざわりを堪能できる。
カツオやこんぶ、シイタケ、煮干しなどを2種類のしょうゆと共に使い分け、全メニューつゆを変えるこだわりにも脱帽だ。
香りのよさ、強いコシ、噛みしめるほどに感じる甘み、なめらかなのど越し。
通をもうならせる自慢の十割蕎麦には、三瓶山でとれる在来種のソバを使用。
一般的なソバより粘りが強いため、切れにくいのが特徴だそうで、温そばで食しても伸びにくく、逆に吸い付くような口触りが心地いい。
割子や釜揚げといった出雲そばの王道ほか、かけそば・もりそばといった江戸そばも楽しめる。
エビや大葉、奥出雲舞茸をはじめ、季節の野菜が盛り合わせになった天ぷらも個性的。
独自の揚げ方で衣は薄く粉雪のように繊細、なおかつ時間が経ってもぱりぱりサクサク。
太白ごま油を使用しているため、コクは強いのにしつこくない。
同店もうひとつの特徴は、カツオやこんぶ、シイタケ、煮干しといったダシの素材と、2種類のしょうゆを巧みに使い分けた5種類のつゆ。
メニューそれぞれに合うように調整しているというから驚きだ。
右が主に温かいつゆに使用する井上醤油、左が冷たいものに使う垣崎醤油で、ことに写真の垣崎醤油は「そばに合うように」と特注してもらっている。
「出雲そばでありがちな、全部のそばを同じつゆでいただくのがどうにも納得いかなくて…。
店では江戸そばも出していますし、違うメニューですからそれぞれに合うつゆで召し上がってほしいんです」と店主の馬石 優さん。
蕎麦も品ごとに微妙に切り方を変えており、つゆに試した醤油は優に40種類を超える。雲南と大阪の蕎麦店で数年修業してからは、ほとんど独学で料理を追求してきたという。
研究熱心にもほどがある馬石さんの、半端ないこだわりぶりには脱帽するしかない。
蕎麦好きであれば、思い切りおなかを空かせて赴き、冷・温どちらのメニューも試すことをおすすめしたい。
人気メニューのごぼう天蕎麦(写真左、冷・温とも1,320円)と、もりそば(880円。写真は大盛1,210円)。
山あいの隠れ家のような店。
テレビや雑誌などでも取り上げられ、特にバイク番組で紹介されたことからライダーたちが立ち寄ることが多い。
粋なのれんをくぐり、店内へ。
たたら製鉄にゆかり深い、くぎを一切使わない軸組造り高殿式の建物で、座敷は肌当たりのいいガマのむしろ敷き。趣きある空間でいただく蕎麦は格別だ。
店内いたるところに絵画や陶芸などの美術品が配されており、目をなごませる。
わざわざ行く価値のある、そんな蕎麦屋にまた、出会ってしまった。
奥出雲前綿屋 そば処 なごみ庵
住所:雲南市吉田町吉田892-1 【MAP】
電話:0854-74-0168
営業:11:00~15:00
休み:火曜日
駐車場:あり
IG: こちらから
(記事は2022年12月17日現在)