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十割蕎麦の魅力を存分に味わい尽くす<奥出雲前綿屋 そば処 なごみ庵>雲南

粘りが強い三瓶在来種で打つ十割蕎麦で勝負、6月の開店以来、山あいの店に客足が絶えない。

香り良く甘みを感じる麺は、冷たく締めて強いコシを、アツアツでもっちりした歯ざわりを堪能できる。
カツオやこんぶ、シイタケ、煮干しなどを2種類のしょうゆと共に使い分け、全メニューつゆを変えるこだわりにも脱帽だ。

割子またはもりそばと共に、口当たり繊細な天ぷら、極上の豆腐を味わうたたら御膳セット(1,760円、写真)をはじめ、組み合わせて楽しみたい単品も。

香りのよさ、強いコシ、噛みしめるほどに感じる甘み、なめらかなのど越し。

通をもうならせる自慢の十割蕎麦には、三瓶山でとれる在来種のソバを使用。
一般的なソバより粘りが強いため、切れにくいのが特徴だそうで、温そばで食しても伸びにくく、逆に吸い付くような口触りが心地いい。

割子や釜揚げといった出雲そばの王道ほか、かけそば・もりそばといった江戸そばも楽しめる。

エビや大葉、奥出雲舞茸をはじめ、季節の野菜が盛り合わせになった天ぷらも個性的。
独自の揚げ方で衣は薄く粉雪のように繊細、なおかつ時間が経ってもぱりぱりサクサク。

太白ごま油を使用しているため、コクは強いのにしつこくない。

セットには、木次町にある豆腐の名店「豆腐工房しろうさぎ」の豆腐もつく。

膳に添えられたものは、薬味に至るまで吟味された食材で、逸品尽くしとはこのこと。

同店もうひとつの特徴は、カツオやこんぶ、シイタケ、煮干しといったダシの素材と、2種類のしょうゆを巧みに使い分けた5種類のつゆ。

メニューそれぞれに合うように調整しているというから驚きだ。

 

右が主に温かいつゆに使用する井上醤油、左が冷たいものに使う垣崎醤油で、ことに写真の垣崎醤油は「そばに合うように」と特注してもらっている。

「出雲そばでありがちな、全部のそばを同じつゆでいただくのがどうにも納得いかなくて…。
店では江戸そばも出していますし、違うメニューですからそれぞれに合うつゆで召し上がってほしいんです」と店主の馬石 優さん。

蕎麦も品ごとに微妙に切り方を変えており、つゆに試した醤油は優に40種類を超える。雲南と大阪の蕎麦店で数年修業してからは、ほとんど独学で料理を追求してきたという。

研究熱心にもほどがある馬石さんの、半端ないこだわりぶりには脱帽するしかない。

 

蕎麦好きであれば、思い切りおなかを空かせて赴き、冷・温どちらのメニューも試すことをおすすめしたい。

人気メニューのごぼう天蕎麦(写真左、冷・温とも1,320円)と、もりそば(880円。写真は大盛1,210円)。

 

山あいの隠れ家のような店。

テレビや雑誌などでも取り上げられ、特にバイク番組で紹介されたことからライダーたちが立ち寄ることが多い。

 

粋なのれんをくぐり、店内へ。

たたら製鉄にゆかり深い、くぎを一切使わない軸組造り高殿式の建物で、座敷は肌当たりのいいガマのむしろ敷き。趣きある空間でいただく蕎麦は格別だ。

 

店内いたるところに絵画や陶芸などの美術品が配されており、目をなごませる。

わざわざ行く価値のある、そんな蕎麦屋にまた、出会ってしまった。

 

奥出雲前綿屋 そば処 なごみ庵

住所:雲南市吉田町吉田892-1 【MAP】

電話:0854-74-0168

営業:11:00~15:00

休み:火曜日

駐車場:あり

IG: こちらから

 

(記事は2022年12月17日現在)

 

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