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【出雲市】<talaat>滋味あふれる自家製酵母の手ごねパン

島根産を含む国産の小麦を使い、手ごねで作り上げる珠玉のパンが並ぶ。

市販の酵母やイースト、ベーキングパウダーなどを入れず、ライ麦やお米、麹由来の自家製酵母で発酵させた生地の味わいは、どれも個性的かつ奥深い。

写真手前=チーズエピ330円、2列目左から=食パン(小人)220円、あんぱん220円、フーガス260円、3列目左から=食パン350円、カンパーニュ(ハーフ500円~)。

 

店の看板・カンパーニュや食パン、フォカッチャなど、シンプルなものほど、奥に秘めた滋味を感じさせる。

パンの種類によってライ麦や全粒粉、レーズン、島根県産のコメや麹(こうじ)から起こした酵母を使い分け、豊かな酸味や甘みを引き出す。

自家製の酵母は種をついで使えるようになるまで3日かかるそうだ。

便利なイースト菌はパン作りに特化した“特待生”だが、店主は自然由来のいわば“雑草”のような菌からしか作れないうまみに魅力を感じてしまうのだという。

 

棚に置かれたその日のラインナップを見て品定めしつつ、注文はカウンター横のガラスケースから。

リベイクでさらにおいしいというあんぱんや、コショウのきいたフーガス、端の香ばしさがたまらないチーズエピなどはおやつやおつまみに◎。

ビールやワインにも合う原木エピに入ったベーコンは、塩とコショウだけで味付けした島根産豚肉を原木でいぶす製法にほれ込んだという、出雲市大社町のスモークハウス・白南風(しらはえ)のもの。

このほか、木次牛乳のホワイトソースが決め手のクロックムッシュ、注文後に仕上げてくれる発酵生地のドーナツも捨てがたい!

 

パンのラインナップは10種類程度。

手ごねなので、たくさんの種類や数は作れないのが現状だ。

非効率で面倒な作り方だが、店主はそれこそがパン作りの醍醐味と考えているようだ。

「『売りやすい、買いやすいパン』に傾倒するのは商売する以上無理もないことです。でも自分はもっと楽しみながらパンを作りたいんです」。

ユニークな話しぶりに来歴を聞くと、音楽や本といったカルチャーをこよなく愛しつつ、オーガニックスーパーの店員やコンブ漁、酒造りなど食に関わる多様な職を経験し、西表島から利尻島まで渡り歩いてきたという。

 

パンの道に入ったきっかけの一つは、自然由来の酵母パンで草分け的な存在の東京「ルヴァン」や、培養・発酵をキーワードに唯一無二の世界観でパンを焼く鎌倉「パラダイスアレイ」のパンに衝撃を受けたこと。

中でもルヴァンの店主の著作で読んだ「よりよいパンは人を健康にし、平和を導く」という理念が体現するものこそ、目指す理想のパンだ。

 

「あこがれてるパン屋は多くを語らないんですよね。僕はしゃべりすぎかも」と笑うが、来店客と世間話から並べたパンのおいしい食べ方まで話が弾む様子に、人柄がのぞく。

古い酒屋を改装した趣ある店舗には、若者から近所のご老人までぶらりとやってくるし、夕暮れどきは小腹を満たす高校生らでにぎわう。

和やかな空気をもたらすパンが、その真ん中にある。

 

talaat(タラート)
住所:出雲市平田町991-16 【MAP】
営業:12:00~17:00
休み:営業日はInstagramを確認
駐車場:あり(2台)
問い合わせはInstagram「@talaat_izumo」DMへ

(記事は2025年7月29日現在)

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