SPECIAL TOPICS

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山陰ラーメン事情 vol.6

山陰ラーメン事情 vol.6

大きな波になりつつある「汁なしラーメン」

人気ラーメン店のメニューには「油そば」 や「まぜそば」などと言われる「汁なしラーメン」がある。山陰にも昨年から今年にかけて「汁なしラーメン」の専門店が開店するなど、ここにきて大きな波になっている。今回は「汁なしラーメン」そのものが持つおいしさや楽しさを紹介してみたい。

風味異なる3種類「油そば専門店 日の出丸」(鳥取市)

2020年にオープンした鳥取県岩美町の正統派醤油ラーメン「めん処 日の出丸」の2号店として、2023年1月に鳥取市で開店した油そば専門店。香り油を変えることで、「ネギ油そば」「煮干し油そば」「ニンニク油そば」と風味の違う3種類をラインナップする。麺は加水高めのモチモチした食感が自慢の中太ストレートの自家製麺。油ダレがよく絡み、麺を食う楽しさがある。トッピングは、レアチャーシューに、ネギ、刻み海苔、ゴマとシンプルで、レアチャーシューは、シンプルな肉のうま味が楽しめる。大ぶりで食べ応えがあり、海苔とゴマの風味がアクセント。

牛骨出汁を活かしたバランスが絶妙の汁なし牛骨ラーメン「牛骨ラーメン たかうな」(琴浦町)

牛骨ラーメンの店としては珍しい「牛骨つけ麺」に、汁なし牛骨ラーメン「まぜそば」、「牛骨ラーメンバーガー」までそろう。「まぜそば」は、多加水平打ちの太麺に、トッピングはサイコロ状の炙りチャーシュー、メンマ、味玉、青ネギ、醤油と牛骨だしとごま油。牛脂の甘い香りにごま油が程よいバランスで合わさり香ばしい。サイコロ状の炙りチャーシューの食感もおいしさを引き上げている。麺、油、出汁、カエシ、具材、すべての要素がバランスの良いおいしさだ。近年は米子市に支店もオープンしているので足を運びやすくなった。

シンプルだからこそ常連客に支持される「油そば専門店 笑ちゃん」(米子市)

東京の「油そば専門店 笑麺亭」のFC店として2016年9月にオープン。現在は本店直営の「油そば専門店 笑ちゃん」にリニューアル。メニューは「油そば」のみと専門店ならでは。やや縮れてもっちりとした中太麺に、トッピングは肩チャーシュー、メンマ、ネギ、ワカメ、刻み海苔。ルックスは〝the油そば”と言える。食べ方は、酢を3周、ラー油を2周回しかけて、熱いうちに器の底から麺をひっくり返すように、しっかりと混ぜ合わせる。程よい酸味と辛味に、海苔の香りやワカメの食感などがアクセントとなり、油そばならではのストレートなおいしさが楽しめる。麺を食べ終えたあとは「チータンタン」という卵スープを入れて〆るのがオリジナル。

オープンするや早くも客が絶えない人気店に「東京まぜそば 麺屋まつり」(米子市)

看板メニューの「東京まぜそば」は、名古屋の台湾まぜそばの元祖「麺屋 はなび」から東京進出した店の味を継承している。モチモチとした食感で心地よい国産小麦100%の多加水ストレート太麺に、台湾ミンチ、卵黄、刻み海苔、ニラ、ネギ、魚粉、ニンニク(ありなしが選べる)がきれいに盛り付けられる。「台湾まぜそば」といえば辛いイメージだが、卵黄のまろやかな甘みがあるので、それほど辛くはない。どちらかと言えばうま味たっぷりで濃厚な味わい。海苔やニラの香り、魚粉のうま味などの具材のさまざまな味わいが、次々と口の中で暴れて、まさに〝まつり”だ。追い飯や〆のスープが無料で楽しめるのもポイントが高い。

力強い家系テイストと 追い飯がクセになる「ラーメン はし友」(米子市)

前回に紹介した「横浜家系ラーメン」の店。平日限定の「まぜそば」は、やや平打ちぎみの多加水全粒粉極太麺に、家系の出汁とカエシをベースにしたタレを使う。トッピングは辛ミンチ、卵黄にホウレンソウ、キャベツ、極太メンマ、ネギ、刻み海苔。モチモチとした食感が良い麺に油ダレがからむ。卵黄がトッピングされているので、まろやかさもあるが、それでもシッカリと醤油が主張する。そして辛ミンチのうま味と辛味が程よいアクセントになる〝家系”テイストなおいしさだ。別料金になるが、ライスで追い飯に生卵がオススメだ。まったり卵かけご飯のようになり格別においしい。麺を食べ終えた後にさらなる楽しさがある。

あご出汁にアジアンテイストなアレンジが魅力的「麪家 ひばり」(松江市)

第2回で紹介した「あごだし白湯らぁめん」が人気で、食べログ島根ラーメン部門で常にトップを走る実力店だが、外せないのが「しびれる旨さ 汁なし担々麪」である。中細縮れ麺に、甘辛ひき肉、花椒とネギ。おいしい食べ方は、麺を持ち上げるようにして、上下によく混ぜること。混ぜれば混ぜるほどおいしくなる。シコシコとした麺に、花椒の麻(痺れ)に、ピリッとくる辣(辛さ)が絶妙にバランスがとれ、隠し味にトムヤンぺーストなども使われていて複雑な香りとうま味が混然一体となった奥深いおいしさ。一度食べれば間違いなくハマる一杯。

昆布のまろやかなうま味が際立つトリプル出汁「麺や 拓 松江店」(松江市)

本コラム3度目の登場となるが、やはり汁なし系の「まぜめん」も、看板メニューの一つで外せない店だ。麺は自家製の多加水中太ストレート麺。トッピングは、豚バラチャーシュー、肩ロースレアチャーシューの細切り、メンマ、刻み海苔、ネギ、マグロ節。大山小麦を使った麺は、シッカリとした食感と香りもよく、煮干×昆布×鶏のトリプルダレは、煮干しの香りに、白湯出汁のうま味、醤油、そして昆布の丸いうま味が前面に感じられるオリジナリティなテイスト。もちろん麺を食べ終えたあとにライスを投入して〆ると、マイルド感ある昆布のうま味をまとった飯がおいしい。

納豆好きにはたまらない 味わいの一杯「らーめん とんてき 大翔」(松江市)

ここも第3回で紹介したが、「らーめん」から「つけ麺」に「混ぜそば」はもちろん「焼きらーめん」もラインナップ。ノーマルな「混ぜそば」もあるが、今回紹介したいのは「納豆混ぜそば」だ。多加水平打ちストレート中太麺(200g)に、トッピングは、チャーシュー、モヤシ、ネギ、味玉、メンマ、魚粉、刻み海苔、カイワレ、そして主役のひき割り納豆と卵黄。よく混ぜると、納豆のネバネバが、麺と具材に絡むように拡散していく。そして納豆の香りも漂う。納豆好きには、たまらないビジュアルと香りで、たまらないおいしさだ。

松江市に移転して 「油そば」が人気上昇中「らーめん・油そば TORA」(松江市)

2016年に境港市で「ラーメンTORA」としてオープンし、2022年8月に松江市に移転。「油そば」は中太縮れ麺に、チャーシュー、太メンマ、辛みネギ、モヤシ、白ネギをトッピング。まずはそのまま混ぜて食べてみてほしい。シコッとした食感の中太麺に、数種類の醤油に牛脂で焦がした醤油を加えた無化調のタレ。牛脂由来の芳ばしく甘い香りに、醤油のうま味が広がり、安心感のあるノスタルジックなおいしさ。酢を一回しすると独特のうま味と酸味が加わることでコクが生まれ、さらにラー油を一回しすると、ごま油の芳ばしさと辛味がアクセント。移転後の松江市の方が、麺好きの松江人の関心を引くのか「油そば」の人気が高いそうで、すっかり市民権を得たようだ。

島根大学前で絶大な 人気を誇る”二郎系”「めん家 現進」(松江市)

2019年8月に島根大学前にオープンした〝二郎系らーめん”の店で、島大生はもとより、ガッツリとやりたい客から絶大な人気を誇り、「らーめん」以外にも「つけめん」「まぜそば」もそろう。二郎系は、麺や野菜などの量をカスタマイズできるのが特徴で、全てのメニューを同額で、麺、ニンニク、野菜、背脂、味カラメを増量できる。基本とすれば、一般的な店とそれほど変わらないが、ここは、自分の腹と相談しながら、食べ残さない程度に増量して、二郎系ならではの「まぜそば」を体験してみるのが良いだろう。麺は、きしめんのようなモチモチとした食感の平打ち超太縮れ麺。よく混ぜれば、麺に野菜と背脂が一体化しておいしい。二郎系らしい醤油と背脂のパンチはあるが、鶏出汁ベースなので鶏油の甘い香りにマイルドさもあり、パンチとマイルドさを併せ持った味わいだ。

いち早くトレンドを取り入れてリピーター続出「麺屋 ハレの日」(出雲市)

2022年6月出雲市にオープンした。店主は、牛骨ラーメンの本場、鳥取県中部の出身。「牛骨ラーメン」が看板の新しい店だが、新たな「汁なしラーメン」の楽しみ方として東京で注目されている「釜玉ラーメン」を、早くもメニューに取り入れて話題となっている。「釜玉ラーメン」は、ゆでたて麺に、卵、醤油ダレと油が基本だが、もちろんアレンジされ、自家製麺に、卵、白醤油を使ったカエシ、牛脂に、牛骨出汁を少量加える。白髪ネギ、刻みタマネギ、キクラゲ、ニンニク、糸唐辛子をトッピング。温かいうちに卵を絡めるように、よくかき混ぜると、卵のまろやかさに、醤油の風味と、香ばしい牛脂で、シンプルな味わいなのに、コクとシッカリとしたうま味がある。残ったタレに追い飯をすれば、卵と醤油に牛脂が一体となった特別仕立ての卵かけご飯のようで最高。リピーターも多い。

絶妙なバランスの秘伝のタレが自慢「麺家 崇心」(益田市)

2015年に益田市内の中華店「天心」のグループ店としてオープン。進化を求めてたどり着いた「背脂鶏一番出汁醤油らーめん」から「トマト系らーめん」まで、精力的にメニューを開発する店長が、開店以来苦楽を共にした一杯が「油そば」。常連客から影のナンバーワンと言われ、コク、うま味、辛味、全てのバランスを絶妙に配合した秘伝のタレを使っている。食感の良い中太の縮れ麺に、トッピングはミンチ、青ネギ、モヤシ、カイワレ、味玉、糸唐辛子。秘伝のタレは9種類の調味料を合わせてあるそうだが、ごま油が香ばしく、一味唐辛子の辛味がピリリと刺激する。そして酸味もシッカリと効いているので、コクがありながらも、スッキリとしたおいしさ。
今回紹介したのはごく一部、他にも「汁なしらーめん」を揃え、人気の一杯となっているお店はたくさんあります。普段なんとなく行っているところにも、メニューをよく見れば「汁なしラーメン」があったりするのではないでしょうか。そして一度食べてみれば、意外なおいしさの発見があるかもしれません。うまくハマれば、やみつきの一杯になるかも。ぜひ一度お試しあれ。

◎文・写真:松村 隆久 (まつむら・たかひさ)

フリーカメラマンを本職とする傍ら、ラーメンの食べ歩きをライフワークとする。自分流のラーメンを求めて、山陰各地をはじめ、関東、関西、九州など県外へも足を運び食べ歩いたラーメンは数知れず。

ブログ・麺ある記 山陰―ラーメンの旅―(こちらから)、フリーペーパーLazudaコラム、日刊ラズダ執筆中。

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