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山陰ラーメン事情 Vol.2
山陰ラーメン事情 Vol.2
バリエーション豊かな個店が増加
前回の「島根ラーメン事情」では古くから愛される老舗を中心に紹介したが、近年は他県と同じように、バリエーション豊かな新しい流れのラーメンを提供するお店が増えている。鳥取牛骨ラーメンの祖となった店や、牛骨から鶏白湯や煮干し系まで、多彩なラーメンがそろう鳥取県米子市にもちょっと足を延ばして、中海・宍道湖圏域の新進気鋭のお店を紹介する。(松村 隆久)
■掲載店一覧
住所:米子市皆生温泉4丁目1-20【MAP】/℡0859-34-6008
〇麺処 想
住所:米子市角盤町1−73 アクティビル 101 【MAP】/℡0859-30-3439
住所:米子市旗ヶ崎2丁目13-29 【MAP】/℡0859-21-9088
住所:松江市北堀町189 【MAP】/℡0852-21-5062
〇天空
住所:松江市学園2丁目23-8 【MAP】/℡0852-25-5380
〇麺や 拓
住所:松江市学園2丁目27-28 【MAP】/℡0852-23-0700
住所:松江市学園2丁目9-3 【MAP】/℡0852-67-2157
住所:出雲市白枝町539-6 【MAP】/℡0853-22-3870
住所:出雲市斐川町学頭1815-1【MAP】/℡0853-73-7241
住所:出雲市駅北町9-1 【MAP】/℡0853-23-0078
つけ麺を地域に浸透させた人気店 「麺処 三鈷峰」(米子市)
店主の岡本さんは開業支援塾「鳥居式ラーメン塾」(本部・東京)で学んだ本格派。ラーメン、つけ麺、油そばまで揃うメニューの中で、一番人気は〝つけ麺〞だろう。基本の「つけ麺(醤油)」は、丸鶏やガラ、モミジなどを長時間煮込んだ鶏白湯をベースに、節類などの旨味を合わせた濃厚鶏白湯魚介出汁と多加水ストレート太麺。東京から取り寄せる麺は、モチっとした心地よい食感で濃厚なつけ汁が絡み、食べごたえのある癖になる美味さ。つけ麺には「海老つけ麺」「塩鰹つけ麺」などのバリエーションもそろう。
新感覚エスプーママジック「麺処 想」(米子市)
2017年頃に倉吉市の居酒屋で間借り営業していたが、2019年4月に満を持して米子市に新店舗をオープンさせた。店主は関西で経験を積み、エスプーマを使ったラーメンを提供する。エスプーマは亜酸化窒素で、あらゆる食材をムース状にできる調理器具を使った調理法。鳥取産の丸鶏をメインとした鶏白湯をベースにしたスープに、エスプーマを使ったカツオとアゴの出汁、少量の柚子を加えたムース状の泡が覆う。鶏白湯のしっかりとした旨味にエスプーマの泡を溶かすと、魚介の旨味とまろやかさが加わり新感覚な美味さが楽しめる。
一条流がんこラーメンを継承する気鋭店「がんこラーメン 華漸」(米子市)
東京の有名店「一条流がんこラーメン」の系列にあたる。店主が自身の叔父にあたる「元祖一条流がんこ 八代目」の味を継承して2016年に米子市で開店。朝6時から営業していて、山陰では珍しい「朝ラーメン」が楽しめる店でもある。牛骨、豚骨、魚介、野菜などを使用したクリアーで淡麗なスープと、コシのある自家製の多加水縮れ極細麺。ウェーブが口の中に当たる楽しい麺は、スルッとのど越しも良い。すべてが綺麗にきっちり仕上げられたキレのある大人のラーメン。
城下町松江のモダンラーメン「麪家ひばり」(松江市)
「食べログ百名店」にも選ばれ、「島根ラーメン部門」で常にトップを走る人気店。松江城からほど近い立地で、地元客のみならず県外から訪れる客も多い。一番人気の「白湯らぁめん」は、白湯に地元アゴ(トビウオ)出汁をメインに、煮干しの旨味をふんだんに用いた魚介系。アゴ出汁の香りと旨味が前面に主張し、マイルドな白湯が下から支える。トッピングの辛肉玉を溶かすと、ピリ辛とミンチ肉の旨味でコクが増して飽きることなく味わえる。その他にも「濃魚介つけ麪」「海老まぜ麪」「汁なし担々麪」など豊富なメニューが揃う。
安定の豚骨魚介の旨味「天空」(松江市)
東京の有名店で修行経験のある店主が独立開業したお店。王道の豚骨魚介出汁の「らー麺」が看板メニュー。炊きだされた豚骨のシッカリとした旨味と、魚介の香りのバランスがきれいにとれた力ある美味さ。麺は低加水の中細ストレート。食感よくスープとの相性も抜群だ。チャーシューは柔らかく旨味たっぷり。厚切りメンマはコリっとした食感が楽しめる。その他に「特製中華そば」や「つけ麺」も人気。行列が途切れず売り切れ必須の店。
大阪仕込みの実力店「麺や 拓」(松江市)
大阪の人気店が、2017年に店主の地元・島根に移転オープン。濃厚鶏白湯に魚介出汁を合わせた「鶏×魚(ダブル)らーめん」が定番メニュー。鶏のふくよかな旨味に、魚介の香りと旨味がブレンドされ、コクがあるのにスッキリとした醤油味。麺は米粉と大山小麦を加えた自家製の低加水中細ストレート麺で、シコシコした食感がいい。煮込みとレアの2種類のチャーシューを楽しめるのも魅力。その他に魚介出汁100%に数種の地元醤油を合わせた「醤油ブラック」も人気の一品だ。2017年「東京ラーメンショー」に島根で初出店した実力を持つ。
銘店のDNAを受け継ぐ「支那そば かつみ」(松江市)
店主が東京の銘店「支那そば 八雲」で修行し開店。修行先の流れを汲む「ワンタン麺」が人気メニュー。スープは鶏、豚骨をベースに、昆布、煮干し、かつお節が香る醤油味。コクのある「黒だし」と、キレがある「白だし」、合わせの「ミックス」が選べる。麺は滑らかでシコシコとした中細ストレート。ワンタンは具沢山で肉とエビの2種類。ご馳走と呼ぶにふさわしい贅沢なワンタン麺が、好みや気分で組み合わせが選べるのが嬉しい。
異色の料理人のセンス光る「遊食 空海」(出雲市)
店主は元フレンチシェフ。大阪の日本料理店「神田川」からフレンチの道に進んだという異色の経歴を持つ。看板メニューの「空海らーめん」は、オーブンで香ばしく焼き上げたマグロの頭と鶏、豚骨、野菜を炊き上げ、三種類の醤油に焼サンマや昆布を使ったカエシと、煮干し油を合わせた魚介の旨味が香り立つ風味豊かなスープ。麺は食感よく腰のある中細ちぢれ麺。柔らかく煮込まれ、角煮のような厚みがあり旨味たっぷりなチャーシューや、黄身トロトロの味玉など、すべてに料理人ならではの技量を感じる一杯。
貝のプロが作る魚貝系ラーメン「かみあり製麺」(出雲市)
2018年のラーメン女子博にも出店した実力店。店主は貝の卸業を本職とする貝のプロ。シジミをもっと身近に食べてもらいたいとの思いからラーメンに思い至り、製麺からスープまで県外のラーメン学校で学びオープンさせた。鶏とんこつをベースに、シジミやハマグリの出汁を合わせたWスープに自家製麺。日本有数の漁獲量を誇る宍道湖のシジミを使った「縁結びしじみ塩らぁ麺」や、「はまぐり醤油らーめん」「えび味噌らーめん」など、魚貝の旨味をギュッと詰め込んだラーメンを提供する。
地元、全国の厳選食材使った一杯 ラーメン「篠寛」(出雲市)
島根の食材をはじめ、全国から選りすぐりの食材を使ったラーメンを提供する。イチオシは自家製ラー油を使った「篠寛流担々麺」で、旨味に程よい辛味、そして酸味とバランス良い味わい。さらに卵黄を溶かすとまろやかな口当たりに変わり、辛味に弱い人にも食べやすくなる。麺は地元モトオカ製麺の中太縮れ麺。シッカリとした食感でスープとの相性が良い。辛さは好みで調整も可能。また1月に同じ出雲市に二郎系ラーメンの「篠寛ジロー」もオープンさせ、ますます目を離せない。
私がラーメンの食べ歩きを始めたころに比べると、身近に数多くの魅力あふれる実力店が存在する昨今、今回ご紹介したのはその中のほんの一部。今年も新店が続々とオープンするなどなかなか紹介しきれないが、ぜひ好みの一杯を見つけてみて頂きたい。
◎文・写真:松村 隆久 (まつむら・たかひさ)
フリーカメラマンを本職とする傍ら、ラーメンの食べ歩きをライフワークとする。自分流のラーメンを求めて、山陰各地をはじめ、関東、関西、九州など県外へも足を運び食べ歩いたラーメンは数知れず。ブログ・麺ある記 山陰―ラーメンの旅―(こちらから)、地元フリーペーパーいかこいコラム、日刊ラズダ執筆中。