

読みもの
コラム◆◇◆エキゾチック・トルコ VOL.3

異国の町を歩いてみたら・・・
~絨毯(じゅうたん)の村で絨毯を織る~
メルハバ(こんにちは)。冬も終わりに近づいてきましたが、ほっこりと暖かい織物、絨毯と絨毯織りについてお話ししようと思います。トルコの伝統的な手工芸のひとつに、キリムや絨毯などの毛織物があります。キリムはつづれ織りの織物で、トルコの絨毯はふかふかとしたパイル織りです。
ドシェメアルトゥ地方の伝統柄の絨毯。それぞれの柄に意味がある
わたしが住んでいた地中海地方のアンタルヤの近くドシェメアルトゥ地方は、古くからの絨毯の産地のひとつです。
トルコに滞在してしばらくたった頃、この地方の絨毯織りの女性と知り合い、絨毯の織り方を教えてもらえることになりました。当時は、トルコ語が片言しか話せず、正直、かなり不安でしたが、「こんなチャンスはなかなかないだろうなぁ~」と思い、村に1カ月間住み込んで、絨毯を織りました。
もともと絨毯織りは、冬の間の女性の手仕事です。春から秋の間に、かなりの手間をかけながら、糸を準備します。
まずは、羊毛を手で紡いで糸にして、それを植物で染め分けます。1枚の絨毯を織るためには、10~15色の横糸を用意しなければなりません。そして、縦糸を織り機に張って(これも数人がかりの重労働)、やっと絨毯を織り始めることができます。
トルコの絨毯は、ダブルノットという方法で、2本の糸の間に、横糸をかけて織りあげます。
実は、いちばん苦労したのが、織り図がないことでした。全て口頭で、手を動かしながら1段分の色分けを教えてもらいます。
説明を聞き終えて、「さぁ織ろう」と思ったら、すでに最初にかける色を忘れていた!! なんていうこともありました。
それでも、なんとか数段織りあげてから、はさみで毛足を切りそろえると、やっと柄が現れます。ですので、実際に糸をかけて織っていく段階では、自分がかけている色が正しいかどうかもわからず、言われた通りに黙々と糸をかけていました。
完成したのは、ドシェメアルトゥの伝統的モチーフの絨毯です。植物、動物、生活に基づくモチーフは、母から娘へと、絨毯の織り方とともに古くから受け継がれてきました。
絨毯織りの道具。1段糸をかけ終えたら、キルキットという道具で、上からたたいて目を詰める。
また、数段糸をかけ終えたら、専用のはさみで毛足を好きな長さに切って整える
年々、ライフスタイルの変化から織り手が減っていて、ドシェメアルトゥでも絨毯の織り手も今は数人しか残っていません。
わたしが教えてもらった絨毯織りの女性は、去年、公的機関で資格を取って、学校などで絨毯織りを教え始めました。母から娘へと受け継がれてきた伝統工芸も、別の形で次世代に受け継がれ始めようとされています。
2本の縦糸に横糸をからめ、右手に持ったナイフで切りながら、織り進める
▽過去のコラムはこちら▽

おすすめ記事
