SPECIAL TOPICS

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山陰ラーメン事情 vol.7

山陰ラーメン事情 vol.7

記録的な猛暑だった今夏。秋の気配も感じ始めたこの頃、疲れを吹き飛ばすこの一杯! 変わらない味を守る老舗のラーメンと、今のトレンドを取り入れているニューフェイス店をご紹介します。

老舗ラーメンとニューフェイス

多くの市民から 支持される老舗の味「むさし」(米子市)

創業72年を迎える米子市の老舗ラーメン店の一軒。スープは牛骨ベースで、牛脂がしっかりと浮かび、牛骨特有の甘い香りがたまらない。味わいは甘さを抑えたすっきりとした醤油(しょうゆ)味で、旨(うま)味がグイグイとくる王道のうまさ。肩肉のチャーシューは薄味ながら肉の旨味が感じられ、ザクッと刻まれたネギも食感と甘さが楽しめる。麺は中太でやや加水が低く、長年の経験で茹で上げられ、絶妙なシコッとした食感でおいしい。牛骨と豚骨の違いはあるが、松江の老舗「太平楽」と同様に、オールドスタイルの力強い魅力を感じる一杯。 

住所:鳥取県米子市中町84

駐車場:あり  

席:17席

今に伝えるクラシカルな 松江の味「らーめん うの花」(松江市)

松江市にある創業約60年の老舗ラーメン店。2009年に市街から郊外へ移転したが、農道沿いの辺ぴな場所にも関わらず、次々とお客さんが訪れる人気店だ。何年も継ぎ足して作られるスープは、豚骨ベースの清湯スープで、塩とわずかなチャーシューの煮汁で味を調えてあり、脂は控えめで、シンプルであっさりとした毎日食べても飽きない味わい。麺は中加水の中太縮れ麺で、松江のスタンダード。チャーシューは小ぶりで薄味ながら、トロッと柔らかい食感が特徴。この味は、店主の柳さんが学生時代に修業した当時の人気ラーメン店「横綱」で覚えた昔ながらの松江の味。

住所:島根県松江市福原町237‒2

駐車場:あり  

席:15席

先代から受け継ぐ伝統の味「美香蘭」(松江市)

 松江市街から島根半島を海に抜ける山間に位置する「美香蘭」。屋台から始まり1989年からこの地でオープン。今も市街地からわざわざ訪れる客が途切れない有名行列店だ。「松江クラシック」としては珍しく元ダレを使い醤油味や塩味、味噌味などメニューは豊富にそろう。基本の「ラーメン」は豚骨清湯ベースに継ぎ足しの秘伝の醤油ダレを使った濃醤油味で、香ばしい脂の香りに醤油と清湯豚骨出汁の旨味がフワッと口に広がる親しみやすい味わい。ニンニクを入れるのが特徴だが、好みで量の調整が可能だ。アットホームな雰囲気で先代の意志を継いだ娘家族が変わらぬ味を守り続ける。

住所:島根県松江市島根町大芦3104‒5

駐車場:あり  

席:23席

板前が作る古き良きラーメン「龍頭」(松江市)

 創業43年。玉造温泉街の一番奥にある居酒屋。旬の魚介などおいしい逸品がそろい、ランチ営業もしていて観光客はもとより板前の作るラーメンがうまいと地元民にも人気の店。ラーメンはチャーシュー、メンマ、モヤシ、青ネギが並ぶシンプルなルックス。チャーシューは周りはこんがりと焼かれていて香ばしく、味付けもしっかりで柔らかいが肉感も感じられる正統派。鶏ガラ出汁の塩味のスープを一口すすると香味油が香り、旨味と塩味が染み渡る懐かしさ漂う味わい。中細のちぢれ麺はほどよい食感の松江スタンダードでどこか懐かしい古き良き松江のラーメン。

 

住所:島根県松江市玉湯町玉造1035

駐車場:あり  

席:30席

女将さんの優しさ溢れる チャンポン「 のぎく」(益田市)

 益田市で開店と同時に満席となる昭和から続く名店。今のお女将さんの代になってからおよそ30年、娘さんと二人で店をきり盛りする。名物は野菜がたっぷり入る「チャンポン」と「やきめし」だ。特に「チャンポン」は豚骨ベースの九州風のスタイルでイカ、エビ、豚肉にキャベツ、にんじん、玉ねぎ、キクラゲ、もやしなど具だくさん。野菜のボリュームは圧巻で、麺が出てこないくらいなのは外食でも野菜をたくさん摂ってほしいとの女将さんの優しさのあらわれ。魚介や野菜の旨味が溶け出したクセのない豚骨スープをぐいぐいと飲みながらぱくぱくと食べればお腹も心も満たされること間違いなしだ。

住所:島根県益田市須子町25‒22

駐車場:あり  

席:14席

 

食材の旨味を引き出した 無化調ラーメン「醤油らぁ麺 鹿野」(鳥取市)

 2023年8月に鳥取大学前にオープンした、鳥取県鹿野町の米農家が営むラーメン店。鹿野地鶏をメインに、素材本来のおいしさを引き出すことにこだわった無化調ラーメンを提供する。鹿野地鶏と蔵囲利尻昆布の淡麗出汁に、数種類の醤油を合わせたタレを使用したスープに合わせるのは、三河屋製麺の多加水ストレート中細麺。スープは甘味、酸味、塩味がきれいにバランスし、芳醇な醤油の旨味と、雑味のないクリアで奥深い地鶏の上品な旨味が特徴。飲むほどに旨味が増していくスープと、シコモチッとした食感の麺が絶妙にマッチして、こだわりの食材の雑味のない旨味をストレートに感じることができる一杯。

 

住所:鳥取県鳥取市湖山町南1‒781

駐車場:あり  

席:11席

ハイクオリティな無添加・ 無化調ラーメン「らぁ麺 池島」(大山町 )

 店主は東京のラーメン店で修業し、地元大山町に2022年8月オープン。地元食材をメインに無添加、無化調のラーメンを提供する。大山ハーブチキン丸鶏と大山豚ガラ、境港産煮干しに宍道湖産しじみを使うクワドラプルスープが特徴。醤油味には地元の醤油、塩味にはシママース、味噌味には糀美人を使用し、どれも甲乙つけがたいうまさだ。麺はだいせん麺工房謹製の多加水中細ストレートでシコッとした食感に小麦の風味がスープとよく合う。トッピングには、低温調理の大山豚チャーシューに大山ハーブチキンチャーシューと秀逸でハイクオリティな一杯が楽しめる。土、日は待ち時間が長くなることが多いのでネット予約システムの利用がおすすめ。

 

住所:鳥取県西伯郡大山町富長123

駐車場:あり  

席:11席

本店に負けないオリジナルな メニューが光る「ホット・エアー2」(松江市)

 2018年にミシュランガイド鳥取のビブグルマンに掲載され話題となった鳥取県気高町の「ホット・エアー・コーポレーション」。その2号店として、2021年12月に松江店がオープン。本店と同じ無化調で作る看板メニュー「極み淡麗らーめん」に加え、とろとろ昆布の旨味が絡む麺を、芳ばしい香味油が浮かぶ淡麗出汁のつけ汁で味わう「夏季限定・昆布水つけ麺」や、クリーミーでまろやかな口当たりに鶏の旨味とコクがギュッと凝縮された泡系スープがうまい「春秋冬限定・極み鶏白湯」などの松江店でしか味わえないオリジナルメニューが人気。

 

住所:島根県松江市向島町184

駐車場:あり  

席:14席

おしゃれカフェの 本格エスニックラーメン「AUTHENTIC cafe」(松江市)

 2023年6月に玉湯町の国道9号沿いにオープンした宍道湖が見えるおしゃれな韓国風フォトジェニックカフェ。1階にある「まんまるケーキと焼菓子のATELIER SMITH(アトリエ スミス)」の系列店で人気スイーツ店。ここでは「豆乳グリーンカレーラーメン」や「豆乳トムヤム醤油ラーメン」などのユニークなラーメンも楽しめる。フォトジェニックな空間で提供されるラーメンは、透明なBOXに白い変形丼でサーブされ、ビジュアルも洗練されている。スープは魚介系の香りとほんのり甘い豆乳のクリーミーさが絶妙に組み合わさり、エスニックな味わいがクセになるおいしさ。

 

住所:島根県松江市玉湯町布志名637‒87 STAND 2階

駐車場:あり  

席:11席

 

ラーメンの概念を変えた 「わ~めん」の店「麺処 わや」(出雲市)

 出雲市代官町の魚介和食料理「旬魚旬彩 わや」の2号店で2021年10月にオープンした魚介和風ラーメン「わ~めん」の店。「わ~めん」とは、動物系出汁はもちろん、チャーシューなどの一般的なラーメンのトッピングは一切不使用。日替わり魚介出汁に、会席料理のようなトッピングが付いた麺料理のこと。スープは数種類の魚介が折り重なる深く濃い旨味が口に広がり動物出汁を使っていないとは思えないくらいに力がある。トッピングは別添えで季節によって替わるが「鰤の西京焼き」「ふぐの幽庵焼き」「あわびの酒蒸し」「湯葉」など会席料理のような美しさで今までのラーメンの概念を超越した新感覚な一杯。

 

住所:島根県出雲市上塩冶町2773‒8

駐車場:あり  

席:12席

今回紹介しきれなかったが、「赤のれん(鳥取市)」「いのよし(倉吉市)」「とん楽(米子市)」「をっちゃんラーメン(松江市)」「天心(出雲市)」「麺ズいそべ(金城町)」など、老舗の人気は依然として健在である。さらに、新しい店も東は鳥取市から西は益田市まで次々と誕生し、ここ四半世紀で山陰地方の人々のラーメンに対する嗜好も多様化。そのラーメン熱は冷めることなく続いている。ぜひお店に足を運んで、その味を楽しんでみてほしい。

◎文・写真:松村 隆久 (まつむら・たかひさ)

フリーカメラマンを本職とする傍ら、ラーメンの食べ歩きをライフワークとする。自分流のラーメンを求めて、山陰各地をはじめ、関東、関西、九州など県外へも足を運び食べ歩いたラーメンは数知れず。

ブログ・麺ある記 山陰―ラーメンの旅―(こちらから)、フリーペーパーLazudaコラム、日刊ラズダ執筆中。

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