

読みもの
コラム◆◇◆神の住む島・屋久島に暮らして VOL.8

神々の山へ―九州最高峰!「宮之浦岳」登頂記
早いものでこのコラムも8回目となりました。いつもお読みいただきありがとうございます。これから新緑の季節を迎え、山を歩くには絶好の時期。今回は私にとって大きな挑戦となった屋久島・宮之浦岳の登山についてお話しします。
屋久島は、急峻(きゅうしゅん)な山々が海から立ち上がるように連なる「洋上のアルプス」と称される山岳島です。標高1,000メートルを超える山が実に46座もあり、その中央にそびえるのが九州最高峰・宮之浦岳(1,936メートル)。日本百名山最南の百座目としても知られ、古くから山岳信仰の対象ともなってきた神聖な山です。
この景色こそが宮之浦岳登山の醍醐味と言われるほど、美しい稜線(りょうせん)
屋久島に住んでいる間にどうしても登りたいと思っていた宮之浦岳。前日は期待と緊張でなかなか眠れず、夜明け前の朝5時、標高約1,300メートルの淀川登山口から出発。往復約16キロメートルのコースです。
薄暗い森の中は静まり返り、まるで異世界に迷い込んだような気分に。やがて朝日が昇り、森全体が真っ赤に染まっていく様子はとても幻想的でした。1.5キロメートルほど歩くと現れる透明度抜群の淀川。ここまでの原生林の道はトレッキングとしてもおすすめで、本格的な登山が難しい方でも悠久の森を堪能できます。
さらに進むと、高盤岳(こうばんだけ)展望所に到着。白骨化した屋久杉や、標高1711メートルの高盤岳の上にユニークな形をした通称「トーフ岩」が見られます。この岩は、花崗(かこう)岩が雨で削られてできたもので、屋久島ならではの奇岩です。
まるで豆腐を等分に切ったようなユニークな形をしていることから「トーフ岩」と呼ばれています
標高約1,640メートル地点には、国内最南端の貴重な高層湿原、花之江河(はなのえご)があります。さらに標高約1,700メートルまで登ると、巨大な花崗岩がむき出しになった投石平(なげいしだいら)へ到達。ここで昼食をとり、心身ともにリフレッシュして山頂を目指します。
宮之浦岳付近まで行くと、花崗岩が風化してできた奇石が点在する美しい稜線を見渡せます。見た目はなだらかですが、疲れた体にはなかなかハードな道のり。それでも「あと少し」と自分に言い聞かせ、一歩一歩登っていきます。
標高1936m。雲海が広がる壮大な景色は感動もの!
そして、ついに標高1,936メートル宮之浦岳登頂。そこには、これまで見たこともない圧巻の雲海が広がっていました。頑張って登ったからこそ出会えた、忘れられない景色がそこにはありました。
ちょうど今の季節は山頂周辺でヤクシマシャクナゲが咲き誇り、秋にはヤクシマリンドウなどの高山植物も見られます。九州最高峰の宮之浦岳、ぜひ機会があれば登ってみてください。大自然の中で心が洗われるような登山体験は、きっと一生の想い出になるはずです。
三島佳奈
松江市浜乃木のライフスタイルショッブ「志庵」オーナー。「心と体に佳いものを」をコンセプトに、2年間暮らした屋久島の食品や工芸品などのほか、日々の暮らしに寄り添う洋服と雑貨を扱う。
ホームページ:こちらから
▽これまでのコラム▽

おすすめ記事
